年経た器物には人の思いが宿り、時として怪物となることもありうる


 『共感トワイライト』シリーズの続編になるのでしょうか。ただし、このシリーズ、どこから読んでも楽しめますので、順番はあまり関係ありません。

 ──名古屋駅から名鉄あるいはJRで二駅。もしくは地下鉄東山線に乗り、栄で名城線左回りに乗り換えてから四駅。金山総合駅の程近く、とある雑居ビルの二階に、小さな事務所がある。

 と、いつものフレーズが流れると、おおっと思ってしまうのは、本シリーズを一度でも読んだことある人なら誰しもが得られる共感だと思います。


 本作でも、毎度おなじみ、不思議な力の声を持つ伊達男の樹神《こだま》探偵と、共感能力のある助手の服部少年が不思議な事件に挑みます。


 今回は、『懐古堂』という骨董店に運び込まれる不思議な器物をテーマにした連作短編形式。
 髪の伸びる市松人形。ものいう壺。人の魂を吸い込む万華鏡。
 それらはいずれも曰くありげな骨董品で……。

 しかも、その骨董店の店主は白髪ショートの女性カイコさん。なんとその正体は幽霊。
 この骨董店に持ち込まれる呪物の謎を、樹神探偵事務所の二人が解き明かします。


 格好いいんだけど、どこか残念な色男の樹神探偵。でも、異能の声は最強。
 そして、助手の服部少年は優秀なエンパスであるがゆえに、異界の精神に引き込まれやすい。
 彼らを助ける和装美女の百花《もか》さんは、可愛らしいけど娼婦のような色っぽさ。

 そんな彼らが、なごやの街を舞台に、怪異の事件を解決してゆきます。

 さらに、毎回語られるなごや特有のフードとスイーツ。それが、どれもこれも他地方には存在しないセンスと個性。いずれなごやに出向いて、全部食べてみたくなること請け合い。

 連作短編の形式のこのシリーズ。どこから読んでも安定して面白いのが凄いし、信頼できる。

 これからも、のらりくらりといつまでも続けて欲しいシリーズです。

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