人ならざるモノの想いが引きおこす、不思議で切なくて、どこか温かい物語。
- ★★★ Excellent!!!
作者様の人気作、『共感応トワイライト』の続編。
ですから前作を知っていた方がより楽しめるのはもちろんですが、本作から読み始めても楽しめるようになっているので、気になった方は、とりあえず読んでみて損はありません。
名古屋にある、非現実の世界で起きた怪異事件を解決する、樹神探偵事務所。
そこで助手をつとめるのは、他者の感覚を我がことのように受信できる大学生、服部少年。
その力故に悩むことも多かった彼ですが、いくつもの経験した結果、なんだか以前よりも頼もしくなっています。
しかしそんな彼や、師である樹神先生でも一筋縄ではいかない事件を起こすのが怪異たち。
本作で起きる怪異は、怪談のお約束ともいえる髪の伸びる市松人形や、語りかけてくる壺など、主にモノに纏わるものとなっているのですが、重要なのはそれらモノがどうしてそんな怪異を引き起こすに至ったか。
モノだって時には意志を持ち、ぞんざいな扱われ方をしたら怒り、大事な人が苦しい目にあっていたら悲しむ。そういった想いが募った時、普通の人には理解できないような何かを引き起こす。
そんな、普段は言葉を聞くこともできないモノたちや、それに関わった人たちの思いが丁重に書かれていて、一つ一つのエピソードに心打たれます。
そして本作の重要なポイントが、新キャラのカイコさん。
骨董屋の主人であり幽霊なのですが、彼女のキャラが実にいい。特に、彼女の趣味趣向が語られるシーンでは、毎回ニヤリとすること間違いなしです。