第12話 ビエラ

おばば様に突如引き合わされた二人はとりあえず自己紹介から始めることにした。


「私の名前はシゲヒロ。一応、義肢装具士と言って手足を失った人のために代わりとなる手足を作る仕事をしている」


そう話した瞬間、目の前の女性は机を叩き立ち上がろうとした。しかし、片足がないためかバランスを崩しそのまま椅子へ座りなおすこととなった。


「すまない。それでは私の足を作ってもらうことは可能だろうか?」


「その前に自己紹介を」


シゲヒロがそう言うと、女性は少し気を落としたようだが自己紹介を始める。


「私の名前はビエラ。この国ロイージ王国の中央で騎士として働いていたが、任務中ラッシュウルフの群れに遭遇してしまい左足を失ってしまい今は無職だ」


「先ほどの態度から足を作って欲しいみたいだけど君、ビエラはどうなりたいんだい?」


シゲヒロが質問するとビエラは頭に?マークを浮かべていた。それを察知したシゲヒロが続ける。


「言い方が悪かったね。両足、この場合は松葉づえ無しで歩けるようになりたいのか、走れるようになりたいのかとそう言ったことだよ」


「私は・・・。仕事、騎士の仕事に戻れるようになりたい」


ビエラは泣きながら答えた。


「それは、今の技術ではできない。僕が魔法について詳しくなればあるいはできるかもしれないと言ったところだね。それでも何十年とかかるかもしれない。それでも騎士に戻りたいかい?」


そう聞くとビエラは大粒の涙を流しながら。


「少し考えさせてくれ」

と言った。シゲヒロは立ち上がり部屋から出ていく。そしてビエラは夕食の時間まで一人で泣き続けた。


お腹が空いたであろうと感じたシゲヒロは、ブラウニーとともにビエラを案内した部屋へと足を運ぶ。扉をノックし部屋に入ると、俯いてどうするのかを考えているビエラの姿があった。ビエラはこちらを向き。


「その子は?」

と話しかける。


「この子はブラウニー。この洋館の家事を取り仕切ってくれている妖精だよ。喋らないけれどこちらの意をくんで行動してくれるいい子だよ」


そう言うとブラウニーはペコっと一礼し、夕食を並べ部屋を出ていった。


「まずは夕食を食べるといい。お腹が空いていたら考えも纏まらないだろう。今日は止まっていってくれて大丈夫だから宿の心配もしなくていい」


そう言って部屋を出ていこうとするとビエラがポツリと言葉を漏らす。


「私は歩けるようにはなるのか?」


その言葉がはっきりと聞こえていたシゲヒロは言葉を返す。


「歩けるようにはなる。ただしその練習は必要だし、足のメンテナンスは定期的に必要だ」


その言葉を聞き、少し元気を取り戻したビエラは食事をとり始めたのだった。

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