第8話 大量生産
結局シゲヒロは孤児院で五人全員を見受けした後、木材屋に寄って木材の端材を大量に仕入れていく。あまりにも多く買ったため店主が配送をただで請け負ってくれた。その後冒険者ギルドに寄ってゴブリンの魔石を仕入れ、ついでにゴブリンの輸送と一緒に洋館へ帰ることにした。
洋館に着くと、ブラウニーが出迎えてくれる。元孤児たち五人は小さな子がいると分かると明らかに嬉しそうにしている。シゲヒロはそんな様子に構わず、ブラウニーにこういった。
「この子たちは今日、孤児院から見受けした子達だ。家事について教えてやって欲しい。あと手が足りないときは遠慮なく使ってやって」
そういうとブラウニーは首を縦に振った。そして一人、アミーヤを連れて行った。他の四人はうらやましそうにしていたが時間は有限だ。冒険者たちにゴブリンを入れた檻を運んでもらうと早速、残った元孤児四人に仕事を教える。簡易的に魔法陣を刻むには鍛冶屋に注文をしなければいけないのでまずは箱作りから教えていく。一人一人へナイフの使い方を教えていき、全員がナイフを満足いく使い方になるまでに夕方になってしまった。
「じゃあ、時間も遅いし夕食にしようか」
そう言うと同時にブラウニーがくたくたになったアミーヤを連れてやってきた。
「夕食かい?」
そうシゲヒロが尋ねるとブラウニーは無言で頷く。そのままみんなで夕食を取り、皆を部屋に案内した。あまりの部屋の広さに元孤児五人は驚いており、結局五人で一部屋を使うこととなった。なお、家具を買い忘れていたためみんな床で雑魚寝するそうだ。そんな話がひと段落したときにブラウニーが次はシルヴィアを連れていく。おそらく食器の片付けの手伝いに駆り出されたのであろう。その様子はまるでドナドナされていくかのようだったとだけ伝えておこう。
次の日、五人には昨日と同じ作業を任せ、シゲヒロは街へ繰り出す。行き先は鍛冶屋だ。鍛冶屋に到着すると。
「待ってたぞ。お主に頼まれたものはなんとか完成できた」
そういって親方へ工房の中へ案内される。そこには見事な仕上げられた彫刻刀、注射針、蒸留器があった。
「蒸留器とやらは試運転してみて問題がなさそうだったが、何かあったら言ってくれ。彫刻刀と注射針は問題ないだろう」
「ありがとうございます。それで今日お伺いしたのは、また作って欲しいものがありまして。これなんですけれど」
そう言ってシゲヒロはあらかじめ書き出しておいた木版をさしだした。ちなみに依頼したいものとは例のアイテムで箱の中心をくり抜く土台、それに魔法陣を書きだすための金型である。金型に関しては魔法陣が発動しないように中心部分を少し下げるように設計されている。
「これは魔法陣か?あんた魔法陣を使えるのか?」
親方は驚いたようにそう尋ねてくる。
「ここにお邪魔した日に魔法陣の本を入手しまして、一応簡単な物であれば作成できるようになりました」
「それでこの魔法陣はなぜ中央部分が窪んでいるんだ?」
「その魔法陣は発火の魔法陣と言いまして、使用するときにその窪みの部分を押し込んで魔法陣を完成させることで発動するようにするためですね」
そう言うと親方は目から鱗だったらしくきょとんとしている。シゲヒロが親方の目の前で手を振るとようやく意識が帰ってきた。
「とりあえず試作品は作っておく、その前にあんたの家を教えてくれ。完成した物を置いておくと場所を取って仕方ねぇ。配達するように弟子に伝えておくから頼む」
そう言われシゲヒロは洋館に住んでいることを伝え、洋館に戻ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます