第9話 試行錯誤

シゲヒロが洋館へ帰ってくると、既に鍛冶屋の馬車が到着しており荷物を部屋へ運び込んでいた。またもや代金のことを忘れていたシゲヒロであったが。

「既におばば様から頂いてますので」

そう言われてしまい、結局おばば様にいくら返せばいいのかはわからずじまいだ。


荷物が到着してからシゲヒロは、麻酔薬の調合とゴブリンへの投薬実験を繰り返していた。その間、毎日ゴブリンと毒草を購入していた(これはシゲヒロの借金としてもらった)ので冒険者ギルトは大盛り上がりだそうだ。途中で鍛冶屋より依頼のものが運ばれてきたので例の箱(マッチ箱と名付けた)を冒険者ギルドへ卸すことで借金は返済できた。


元孤児の五人も洋館での生活に慣れ始め、毎日元気に仕事をしてくれている。だがブラウニーに連れていかれる時は、死んだような目をしているが・・・。一体どんな教育をしているかは知らないでおこうとシゲヒロは思うのであった。


二週間ほど麻酔の実験を続けて、ようやく部分麻酔が完成の兆しを見せ始めた。まだゴブリンにしか試せていないため人体への影響は分からないため完成とは言えない。しかし、人体実験するにはどうしたらいいのかわからないためそのまま放置することにした。


その時、冒険者ギルドのギルドマスターの訪問があった。


「実は、マッチ箱の模造品が現れた。しかも作りが甘いのか燃えなかったり逆に燃え広がりすぎたりと品質がまちまちなんだ。どうにかして模造品を排除できないか?」


「えっ?マッチ箱には認証の魔法陣でうちのロゴをつけていますよ。それを広めていただければ、模造品の買い手は激減するかと。ちなみに模造品はいくらで販売されているのですか?」


「冒険者ギルドと同じ値段だ。しかし、そのロゴとやらが付いているという話は聞いてないぞ」


シゲヒロは確かに説明した記憶がなかった。きっと調薬に集中していたため伝え忘れていたのだろうと思いギルドマスターに謝っておいた。ギルドマスターもやれやれといった顔をしている。


「それで認証の魔法陣というのはどういった効果の代物なんだ。」


「それは、この確認用の魔法陣でロゴを見ると光ってこれとセットの認証の魔法陣でロゴが押されたことが確認できます。もしかしてこちらの確認用の物も渡していませんでしたか?」


ギルドマスターは無言で頷き、肯定を表す。シゲヒロは再度謝った。


「とりあえず、ギルドで仕入れるマッチ箱はこいつで確認すればお前さんが作ったことが確認できるんだな?」


「はい。認証の魔法陣と確認の魔法陣はセットになっていますので内から認証の魔法陣を盗み出したりしない限りは問題ないはずです」


とりあえずは納得してギルドマスターは帰ることになった。帰り際に一言残して

「ああ。あとこれの販売だけでもうちでは手一杯になってきている。そのうち新しいギルドを作って商売関連の仕事を丸投げすることになるかもしれん。何かあったら相談に乗ってくれ」


なんだか厄介事に巻き込まれそうな気がするシゲヒロであった。



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