第10話 とある騎士

???Side


私はロイージ王国の中央で騎士をしていた。中央は魔物にあふれているが、土地は肥えており作物が良く育つ。その代わりに魔物に畑を荒らされたりするのだが・・・。そんな土地の警護にあっている最中にラッシュウルフの群れに遭遇した。ラッシュウルフはウルフの上位種と呼ばれ群れで行動する厄介な魔物だ。その時私は、一人で警護にあたっており、多勢に無勢でやられてしまった。途中で異変に気付いた同僚が仲間を連れて助けに来てくれたおかげで命だけは救われたが、片足の膝から下を食いちぎられてしまった。


物覚えが付いた時から騎士を目指していた私は、女らしいことが何一つできず、片足を失ったおかげで得意な力仕事もできなくなった。そんな私を騎士団がおいてくれるはずもなく私は退団を余儀なくされた。婚約者もいたのだが騎士ではない私は必要ないらしく捨てられてしまった。このまま中央にいても辛いことを思い出すだけだと中央を抜け出し田舎でのんびり過ごすことを決意した。


行き先を決めあぐねていたが、そこで使徒様がロンド領に降臨なされたという噂が上がる。今まで現れた使徒様の中には欠損部位も治癒可能な回復魔法の使い手もいたという。ただし、多大な魔力を消費してしまうため長い年月魔力をためることが必要であったという噂もあるが。


このままじっとしているよりも一縷の望みをかけてあってみたいと思い私はロンド領行きの馬車に乗り込んだ。ロンド領はのどかで自然のあふれている領地であった。しかし、野菜や穀物などは痩せており、やはり中央とは異なることが目に見えてわかった。それでも情報収集と食料確保のため野菜を購入した。


「噂ではこの領内で使徒様が降臨されたと聞いたんだけど、どうなんだい?」


「どうと言われてもあったことがないからわからないけれど。なんでも魔法陣を使って新しい道具を発明したらしいよ。確かマッチ箱とかいう代物だったかねぇ。だけどギルドが専売にしているらしいよ。使徒様もそれには何の抗議も出してないっていうからギルドとなにかつながりがあるのかねぇ」


「降臨されたのはどこの街なのだ?」


「それは領都のフスタクルだよ。ただ領主様はとはまだ会っておらず、神官のおばば様と何度かお会いしただけだと聞いているよ。行くなら会えない可能性も考慮に入れておくんだね」


そう言って店主は他の客の相手を始めた。私は必要な情報は得られたのでフスタクル行きの馬車に乗り込む。どうやら聖者や聖女と呼ばれるような回復魔法の使い手ではなさそうだがせっかくここまで来たのだ。会えるのであれば一度会ってみたいと思ったのだ。それに田舎暮らしをしに来たのだから、領都に引っ越してしまおうとも考えていた。


そして私は、ロンド領の領都フスタクルへ到着した。

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