第11話 商業ギルド

冒険者ギルドのギルドマスターが洋館を訪ねてから二週間、この間にロンド領内で商業を行うには新しく作られる商業ギルドに加入することが求められるようになった。それに伴い、個人や商店の情報、また、特許に似た仕組みを導入するためにシゲヒロは多忙を極めていた。商店での取り扱う商品や発明した商品を管理するために認証の魔法陣と確認の魔法陣を全面的に導入することになったのだ。そのため商店には独自のロゴを張り出すことを義務付けられた。そして、そのロゴに使用する魔法陣の作成をシゲヒロが担当している。この作業に時間を取られ、さらに二週間の時間が過ぎた。


そのおかげで商業ギルドが稼働を始め、フスタクル内ではマッチ箱の複製品はなくなった。商業ギルドも軌道に乗り始め、今まで回収の困難であった露店などの税金徴収もできそうだと領主が満面の笑みで話していたと、冒険者ギルドのギルドマスターに聞いた。


その間にも麻酔の研究は進めており、一応、部分麻酔、全身麻酔の両方を完成させることができた。鎮痛剤に関してはまだ手を出すことができていない。また、トレントの木の端材が手に入ったため、人間の手足を模した骨格を作ることができた。これにアイデアを加えていき魔法の力も用いて本来の手足のように動かせる義手・義足の作成に着手するつもりだ。


洋館の内部にも変化があった。今まではブラウニーしかいないと思われていた洋館の内部、中庭にドリアードという妖精がいることが判明した。ドリアードは中庭の植物を管理しており、ブラウニーに渡した毒草の栽培も担当してくれていた。なぜ、ドルイドの存在に気づいたかというと、ゴブリンを中庭で処理している最中に偶然出会ったのだ。ゴブリンに限らず生ものは栄養素が豊富なため放置しておけばドルイドが処理をしていたらしい。ブラウニーが全く話さないため今まで気づかずに処理をしていたが、今後は中庭に放置しておくだけで済むようになった。また、ドリアードの能力には植物の成長促進があるらしく屋敷で出ている食事の野菜や穀物類はすべてドリアードが管理している植物から採取している物だということが判明した。これにはシゲヒロも感謝の言葉しかなかった。


そんなこんなで順調に研究や資金の調達がうまくいっている最中でおばば様が洋館へ訪問してきた。隣には松葉づえをついた女性が立っており、左ひざから下がなかった。


「久しいな。シゲヒロ殿。この度は街で体の一部を欠損した人物に遭遇したのでな。ここまで案内してきたのじゃ。ではここからは若い者に任せるとして老いぼれはお暇させていただこうかの」


そう笑いながらおばば様は洋館から出ていった。


おばば様のジョークに笑えない二人は、とりあえず左足の状態を確認するために別の部屋へ案内し、どこまでおばば様に話を聞いているかを確認した。


「私は、使徒様がここにいるという話しか聞いていない」


その言葉を聞いて顔に手を当て上を向くシゲヒロであった。

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