第15話 木材
ビエラの治療も終わり、支払金額のことも一応話が付いた。あとは義足を作るだけなのだが近場にはあまり良い素材が出回っていなかった。そこでこの国、ロイージ王国の中央寄りの場所からトレントの木材などを手配しようとしたのだが、あいにく今はトレントの素材が不足しているらしい。その理由が中央で新興貴族が誕生したためにその贈り物としてトレントで作られた家具を贈るのが一般的だそうだ。
シゲヒロは困った時は内庭で自然を感じながら考え事や読書をするのが日課となっていた。その時に、ドリアードが暇であれば愚痴を聞いてもらうのだ。今回もドリアードに愚痴を聞いてもらっていると意外な返事が貰えた。
「ここから西に向かった森が今はトレントの森となっていますよ。エルダートレントも発生しているようですし、かなり危険ですが」
「ここから西って、この辺りでは魔物の強さが跳ね上がっていて誰も近づかないって話の?」
「その話を私は知りませんが、確かに魔物の強さは一段上がります。その土地は豊饒であるため魔物の食料が豊富なのです。人間もそのような土地を開発したいのでしょうが、魔物と生存競争を繰り広げることとなるため難しいのでしょう」
シゲヒロは一旦、冒険者ギルドに行ってトレントを討伐できないかを確認することにした。
所変わって冒険者ギルドでは、今日も一段と騒がしい。シゲヒロが来ると割のいい依頼が張り出されるため盛り上がるのだ。シゲヒロ本人は知らないが・・・。今日もいつもの受付嬢に話しかけようとしたら、向こうから話しかけてきた。
「いらっしゃいませ。シゲヒロ様。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「こんにちは、実は西の森にトレントが発生しているという情報があってね。それでトレントを討伐できる人材がいないかと思ってね。確認に来たんだ」
「そうですか。トレントは擬態のうまい魔物でしてそれを見破ることができれば討伐可能だと思うのですが。トレントを討伐できるような人は中央の方へ行ってしまうのですよ」
「そうですか。では残念ですが「俺たちが受けるぜ」」
そう言って話に割り込んできた男がいた。
「依頼を受けてくれるのはうれしいのだけど、君たちに依頼を達成する算段があるのかな?」
シゲヒロがそう質問すると。
「そんなものはない。冒険者なんだ。挑戦しないで引き下がるなんてしねえよ」
シゲヒロは論外だと思い、何か魔道具でも用意してトレントの擬態を見破る方法を考えた方が速そうだと感じた。
「申し訳ありませんが、依頼はなしでお願いします」
「いえいえ。こちらこそ申し訳ありません。何か手段があればお伝えしますのでお待ちください」
先程、口を挟んできた男が何か言いたそうではあったが間髪入れずに受付嬢が返事をしてくれたため依頼を受注されることはなかった。シゲヒロはとりあえず洋館に帰り、トレントの詳しい生態をドリアードに聞いてみようと思うのであった。
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