第16話 トレント

冒険者ギルドから帰ってきたシゲヒロは早速中庭へ向かった。とりあえず休憩したかったシゲヒロは自然に囲まれた空間でマジックアイテムを何か開発できないかを考えていた。するとドリアードがこちらへ向かってくる。シゲヒロは到着するのを待った。


「あれ?今日は二回目ですね。何かありましたか?」


「トレントの詳しい生態が分からないかと思ってね。ドリアードのことを待たせてもらってたんだよ。それで早速で悪いのだけれど何かわからないかい?」


「それほど詳しくはありませんが、トレントは木に擬態する魔物です。そして幹に傷をつけるなどしてもなんの反応をしないことが多いため発見するのが困難とされる魔物でもあります。また、トレントは森の奥にしか生息しないというわけではありません。一般的にはそう思われていますが比較的浅い箇所でも生息しています。そして火を恐れません。これも勘違いされがちですね。あとトレントは魔石を破壊することで行動を止めます。魔石は木の瘤のいずれかに隠れていますので、場所が分かるのであれば弓などでも討伐可能です。私にわかるのはこの程度でしょうか」


「魔石を破壊か・・・。魔石は魔力の塊のようなものなのだよね?」


「厳密には違いますが、そう考えてもらっても問題ないでしょう」


「なら魔力を見ることができれば魔石の位置が分かるのかな?」


「分かると思いますよ」


「ありがとう。それなら何とかなりそうだよ」


「お役に立てたなら光栄です」


シゲヒロは早速魔道具の開発に取り掛かろうと思ったが時刻は既に夕方である。目的の物を作成するには鍛冶屋に出向く必要があるが時間も遅いため明日向かうことにした。


そして次の日、所変わって鍛冶屋である。


「でそのモノクルっていうのを作って欲しいってのは分かったが、材質なんかにこだわりがねぇとはもしやこれがこの間の借りの珍しい依頼ってやつじゃねぇだろうな?」


「それは忘れていたよ。うーん。こんなのはどうかな?」


そう言って出したのはクロスボウの設計図である。ドリアードの話では弓でも討伐可能と言っていたため念のため設計図に起こしておいたのだ。


「この間の蒸留器みたいに設計図通りに作成して完成とはいかないけれどそっちの方が親方は好きそうだしこれ作ってみてくれない?」


親方は設計図を見ると顔色を変え真剣な表情でシゲヒロに問いかける。


「お前さんはこれをどうするつもりなんだ?」


「とりあえずはトレント狩りに使うつもりだけど。量産は今のところしないつもりだよ。自分の身が危なくなるのであれば、量産して戦争でも始めるかもね」


親方はニヤッと笑うと。


「分かった。作ってやるぞ。威力はどれくらいだ?」


「とりあえず太い木に突き刺さる程度でお願い」


親方はやる気満々になり、奥の工房に戻ろうとしたが。


「あっ。モノクルの作成を先にお願い」

というシゲヒロの一言によりやる気がそがれたのであった。

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