第17話 調査依頼

二日後、親方は十個のモノクルを完成させてくれた。代金は銀貨一枚だ。親方はその後、クロスボウに取り掛かるから注文は弟子に取ってもらってくれとだけ言い残し、ウッキウキで工房の奥へ引き下がっていった。シゲヒロはおじさんのそんな姿は見たくなかったと思ってしまった。


洋館へモノクルを持ち帰り、シゲヒロは魔法陣の描かれたフレームにモノクルをはめ込んでいく。今回使用する魔法陣は魔視の魔法陣だ。本来は魔石などに込められた魔力の残量を視るための魔法陣らしいがトレントを発見するのに役に立つかと思い準備した。ゴブリンの魔石をモノクルを通して見てみると、魔石が青色に変化している。空間も若干青みが買って見えているがこれは空気にも魔力が微量ながら存在しているのだろうと結論付けた。

シゲヒロはこのモノクルを魔視のモノクルと名付けることにした。


モノクルを二個持参して冒険者ギルドへ向かう。シゲヒロがギルドに入るといつものように冒険者ギルド内が沸き立った。シゲヒロも慣れた様子で受付嬢のところまで進む。


「実は西の森の調査を依頼したいのですが、腕に自信があり秘密を守れる冒険者に心当たりはありませんか?」


シゲヒロがそう言うと冒険者ギルド内は先程沸き立ったのが嘘だったかのように静まり返る。それほど、西の森は近寄る者がいない状態なのだ。


「シゲヒロ様。西の森は諦められたのではなかったのですか?」


「いいえ。トレントに関しての情報を仕入れて、マジックアイテムも開発したので表装だけでも調査できればいいなと思いまして」


「トレントは森の奥でしか生息していないのでは?」


「いいえ。そうは限らないらしいです。中には森の浅い部分にまで移動する個体もいると聞いています」


「差し支えなければその情報はどこから?」


「ドリアードから聞きました」

シゲヒロのその発言に周りの人間の反応は二つに分かれる。一つは嘘だと話を聞くのを止めるもの。もう一つは真実の可能性を信じ、続きの話を待つものだ。その中でも一つのグループが名乗りを上げた。


「その依頼、俺たち蒼雲が受けるぜ」

その言葉に耳を傾けていた者たちは驚いた。そこで受付嬢が止めに入る。


「困ります。バルドメロさん。まだ依頼の受注はしておりません。これではギルドを通さない依頼として処理し、青雲の皆さんにはギルドを脱退していただかなくて行けなくなります」


「ならはやく受注してくれや」


「うっ。それではシゲヒロ様。依頼は西の森調査。調査の内容はトレントの生息の確認。達成金額は銀貨七枚とさせていただきますがよろしいですか?」


「いえ。依頼は西の森への護衛。また、トレントの調査及び討伐としてください。達成報酬はギルドの裁定に従います」


「えっ。護衛ということはだれか一緒に向かわれるのですか?」


「はい。僕が」


ここで受付嬢の限界が来たらしく、

「ギルドマスターを呼んできますのでしばらくお待ちください」

と言って駆け出していった。


ギルドマスターが到着しこれまでの経緯を説明すると。

「ギルドとしては依頼を受けるしか無かろう。護衛の依頼はそれこそ普通に出しているのだし、向かう先が非常識なだけなのだから。報酬は銀貨七枚、トレントの討伐報酬は銀貨六枚だ」

そう言って締め切った。依頼の受けたのはバルドメロ率いる青雲。そうして細かい契約を詰めていくために冒険者ギルドの一室を借りるのであった。

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