第18話 契約書

ギルドで依頼を受注してもらった後、部屋を一室準備してもらうはずがなぜかギルドマスターの部屋となっていた。もちろんギルドマスターも同席している。理由を聞くと。

「どうせなんか新しい物でも持ち込んでいるんだろ。俺がしっかり見といてやるから安心しろ」

等と言っていた。


シゲヒロは先に契約書を取り出し皆にサインを求める。契約書には、魔道具について他言、持ち逃げをしないこと。他言、持ち逃げした際のペナルティについて書かれている。ギルドマスターはそれほどまですごい魔道具を作成したのかとワクワクしながらサインをしていた。青雲のメンバー6人は字が書けないため、ギルドマスターが読み聞かせ代筆でサインをしていた。


「で、この契約書はどの程度の効力があるんだ?」


ギルドマスターが尋ねるが、シゲヒロには何のことかさっぱりわからず首をかしげる。


「もしかしてこれ、ただの羊皮紙か?」


「そうですよ。ほかに何かあるのですか?」


「契約書は魔法的な縛りをつけるのが一般的で、サインを求める場合には効果が強い物、下手すれば死人が出るような代物なんだよ。心配して損したぞ」


「それ便利そうですね。今度詳しく教えてください。それはさておきこれが先程契約書で秘匿にしていただきたい魔道具です。僕は魔視のモノクルと呼んでいます。効果は魔力を見ることができます」


シゲヒロはドヤ顔で話していたが、周りのみんなは微妙な表情をしていた。そんな表情には気付かずにシゲヒロは続ける。


「このモノクルで見た魔力が込められた物は色が変わって見えます。それは魔石も同様です。今のところゴブリンの魔石でしか試していませんが確実に魔石に色がついていました。つまり、これを使用すれば隠れているトレントの魔石に攻撃を仕掛けることができるということです」


なんとなくボヤっとして聞いていた面々であったが最後には事の重要性を理解できたようだ。しかし、なぜこの魔道具を秘匿しなければいけないのかが分からすギルドマスターが質問する。それに対しシゲヒロの答えは。


「この魔道具に頼ってトレントを乱獲されると僕が困るからですね。トレントの成長にどれほどの年月が必要かは分かりませんが、これからもトレントの木材が定期的に必要になる可能性があります。二つ目はこの魔道具を過信して森に入り怪我人を出すことを防ぐためです。その場合、僕に責任の一端が来るのは面倒なのでそれならば最初から釘を刺しておこうかと思いまして」


言いたいことは分かる面々であったが、全ての理由が自分のためという潔さにいっそすがすがしい気分だった。そこで蒼雲のリーダーのバルドメロから質問が入る。


「契約書にサインを求められた理由は分かりました。しかし、この魔道具があれば西の森の内部まで行くことが可能なのではないでしょうか?なぜ表層の調査だけに止めるのでしょう?」


「単純にトレントを討伐した後は伐採して持ち帰らなければいけません。それを一番安全に行えるのが表層なため、まずはそこから調査を始めようというわけです。トレントがいなければいずれ西の森内部に手を出さなければいけなくなるでしょう」


バルドメロはシゲヒロが無茶な要件を言い出さないような依頼者だと分かったため安心して西の森の依頼に挑めると感じた。

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