第29話 戦闘部隊
ウイスキーが金貨二百枚で売れたおかげでシゲヒロの資金不足は一時の解決を見せた。シゲヒロは初めに戦闘部隊(元冒険者)四人の装備を整えることにした。というわけで毎度おなじみのダンカン工房である。
「というわけでこの四人の装備一式とクロスボウが欲しいのだけれどあるかな?」
「家は工房で武器屋じゃねーんだ。既製品が欲しいなら武器屋に行きやがれ」
「クロスボウはここでしか作れないでしょ。お金はあるから金貨二十枚程度でいい装備を作って欲しいのだけれどどうかな?」
シゲヒロにただ連れてこられた四人は自分たちの装備に金貨二十枚という大金を使うことに大層驚いた。
「ちょっと。シゲヒロさん。そんな話聞いてませんよ。僕たちの装備なんて全員で金貨一枚で十分ですって」
「うちは命を大事に、がモットーなんだ。お金のあるうちに装備を整えないと、命がいくつあっても足りないよ」
シゲヒロのその言葉に四人は口ごもる。そこに親方から援護射撃が飛ぶ。
「そうだ。戦闘をするのには命をかけるんだ。準備できるうちにできるだけやっとけ。金はこいつが払うんだ。貰えるものは貰っといたほうがとくだぞ」
その言葉で観念した四人は採寸され、特注の武器、防具を買うこととなった。そしてダンカン工房を出ると。
「次は馬と荷車を買いに行くよ。ほらさっさと歩く」
そうして相性の良い馬を選ばされ、その馬が引くことができる荷車を購入した。全ての支払いで金貨五十枚は使った。自分たちの購入費用より高い買い物にシゲヒロの正気を疑ったがその分暖かさも感じた四人であった。
それから装備ができるまでは子供たちと一緒に魔力を纏う特訓をし、シゲヒロのクロスボウで射撃訓練を行う毎日が続いた。そして一週間後、ダンカン工房より装備が届けられる。届けてくれたのは弟子であるカロッゾさんだ。
「シゲヒロさん。親方より装備の配達です。全ミスリル製の特注品ですよ」
シゲヒロは四人に試着や試し切りをさせる。その間にミスリルについて詳しく聞くことにした。
「ミスリルっていうのはどんな金属なのでしょうか?特徴や重さは?」
食い気味のシゲヒロに少し押され気味のカロッゾだったが、気を取り直し説明する。
「ミスリルは魔金属と呼ばれる魔力が込められている金属です。特徴としては魔力を通しやすいことですね。魔力を通すことで切れ味が上がったり、耐久力が上がったりすると言われています。重さは鉄よりも少し軽い程度ですね。こんなところでいいですか?」
「ミスリルはこの辺りに取れる場所があるのでしょうか?」
「ないです。これは親方が長年少しずつためておいたミスリルを豪快に使ったらしいです。本来ミスリルはそんなに出回らない物なんですけれど、少量であればこのロイージ王国の中央付近の鉱山で産出されます。でも購入するのも結構人脈なんかが必要で難しいらしいですよ。噂では西の森を北に行った山でも取れるらしいですけれどそこは魔物が強いらしいのでおすすめはできないです」
買うことができないことにはがっかりしたが、性能的には装具の耐久性や利便性をあげるのに役に立ちそうだと感じるシゲヒロであった。
「分かりました。ありがとうございます。親方にミスリルが手に入りそうだったらお金を渡すので仕入れといてくれって伝えといてもらえますか?」
「それは構いませんが、ミスリルは高いですよ。こんな買い物した後でシゲヒロさんお金あるんですか?」
そんな話をしているうちに武器、防具の確認が終わったらしくヨヘムたち四人はうれしそうな顔をしている。
「シゲヒロさん。何も問題ありませんでした」
そう言うとカロッゾさんが羊皮紙を差し出す。
「代金の高い物を売り買いするときには受け取りのサインをもらうことになってます。問題なければこちらにサインをお願いします」
シゲヒロは羊皮紙を受け取るとささっとサインをしてカロッゾに渡した。サインを確認したカロッゾは羊皮紙をたたむと。
「今後もごひいきによろしくお願いします」
と言って帰っていった。これでシゲヒロたちは戦闘の準備が整い、トレントの狩りを始めることができるようになった。
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