義肢装具士の異世界人生再生
るいす
第1話 プロローグ
私、川口 成弘(かわぐち しげひろ)は義肢装具士であった。そう、現代日本ではだ。義肢装具士とは義手や義足といった義肢および装具の作成、適合を行う職業である。
なぜ、このような職業についたかと言えば、私は昔、事故により両足を失った。その時は絶望を感じ車いすでの生活を余儀なくされたが、ある日義足にしてみてはどうかという話が上がった。そして、自分の足に装着する義足を目にして再度絶望する。それはただ足の代わりになる棒が付いているようにしか見えなかったからだ。そして、自分で自由に動ける義肢を作ることを決意した。
それから60年、義肢の研究を続けてきたが結局完成することなく私は死んだ。
そして輪廻の理に変えるはずであった私を神が救い上げた。どうやら私の執念が異世界の神に届いたらしい。私に与えられた使命は剣と魔法の異世界で義肢及び装具を作成し、広めること。次にオートマトンの作成だ。これは異世界のモンスターを少しでも減らしたいと神が考えたために戦闘用のオートマトンを開発してほしいとの依頼だ。私はこの二つ目の依頼を断ろうとした。人工知能などの知識が皆無だったため自動で動く人形など作れる気がしなかったのだ。その考えは神に読まれており、この依頼を受けてくれるのであれば、人工物に魂、魔力を宿す能力を授けると言われた。魔力とやらあいにく分からなかったが魂つまり知能を宿す能力には興味を持ち、この依頼を受けることにした。
そして私は、20歳の姿で異世界に転移した。転移した先は大きな洋館の一室であり、そこには小さな女の子が立っていた。
「え~と。こんにちは。お嬢ちゃん。ここはどこかな?」
私がそう切り出すと。
「私はブラウニー。この屋敷の家事を任された。あなたの義肢を作るのをサポートすることも任されている。この洋館は霊が出るとされ捨てられた街はずれの屋敷。ここを拠点にするといい」
そう言ってブラウニーは立ち去ってしまった。とりあえず私は、ここ拠点とし、家じゅうを散策することにした。洋館の中には家具らしいものはなくキッチン周りの物だけはそろっていた。そして、ブラウニーが食事を用意してくれるため最低限の生活はできていた。部屋もあらかた確認し終わった頃に玄関のベルが鳴る。
「今行きますよ」
と玄関に移動するといかにも信仰者といった格好をした老婆が立っていた。
「神よりお告げがあった。ここに偽物の四肢を作るものがいると。その者が悲惨な人生を歩むものの助けになるであろうと。其方がその吾人かえ?」
「おそらくは私のことかと」
すると老婆は地面に座り込み両手を組み、神に祈る。そして、
「神より其方の手助けをするように申し付かりました。必要なものがあれば私にお申し付けください」
そう言うので私は、
「それであれば、鍛冶屋と木工屋、それに皮などの素材を卸していただけるお店を紹介してください。それと私が作るものは腕や足の代わりとなるものです。それが必要な方へは私にここに訪問すると良いことをお伝えください」
そう言うと、
「それでは、明日それぞれの店を紹介するために参ります。今日はもう遅いので帰らせていただきます。それとこの近くに出没したという話は聞きませんが魔物がうろついているため外には出ませんように」
最後に不吉な言葉があったがとりあえずこの異世界で過ごしていくことを決意したのであった。
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