第25話 金策
奴隷を買った次の日、シゲヒロは朝一番から街に出かけていた。目的はビール、樽、蒸留器の追加だ。それでシゲヒロはウイスキーを作ろうとしているのだ。この異世界ではワインやビールが水の代わりに飲まれている。それほどきれいな水というのは貴重である。それはさておきワインには混ぜ物が多く品質にばらつきがあるためビールを樽買いして蒸留してシゲヒロたちの金策として使わせてもらおうと考えたのだ。
だが、蒸留酒には時間がかかる。その問題を解決するのが魔力だ。魔法陣には高コストだが一定の空間の時間を早める魔法陣が存在する。その魔法陣に魔力を注ぐのを訓練のためと実益を得るために使用することを決めたのだ。
買い物と注文を済ませたシゲヒロはすぐさま洋館へ戻り、魔法陣の作成に取り掛かる。時間を進めるとだけありかなり大掛かりな魔法陣を書かなければならない。それに書くものにも気を配らなければ先に魔法陣の方が朽ちてしまう可能性があった。それを避けるために魔法陣を刻む土台としてトレントの材木を使用することにした。これでトレントの木は使い切ってしまうが、最悪の場合はまた、蒼雲に依頼して討伐してもらえばいいと考えての行動だった。まあ今回はクロスボウもあるのでもしかしたら自分でも討伐できるのではという甘い考えもあったが。
その日、シゲヒロは徹夜して何とか魔法陣を完成させることができた。樽とビールも洋館へ届けられ一応準備が整ったところでお客さんがやってきた。シゲヒロは地下から上がり玄関に向かった。すると。
「私はこの街の領主を任されているバルフレック・フスタクルだ。使徒様に話があり訪問させてもらった」
「使徒様はやめてください。おそらく私がその相手であるシゲヒロです。どうぞシゲヒロと呼んでください」
「ではシゲヒロ殿、率直に意見を聞かせて欲しい。王都で新しい貴族が誕生したのだが贈り物が用意できていない。そこでシゲヒロ殿に何か作る予定があれば教えて欲しいのだが」
「今は新しいお酒を造ってみようかと思っています。ただし作り方をお教えすることはできません。それに、完成する時間も分かりません。それでもよろしければ一樽献上させていただきますがいかがでしょうか?」
その言葉にバルフレックは悩んだ。完成する時期が不明というのは流石に期待するには危うすぎる。他に手はない物かと考えている最中にシゲヒロから言葉が発せられた。
「そう言えば、そのお酒を美味しく飲むために氷が必要でした。なので、氷を作成する魔道具でも作成しましょうか?貴重な鉱石などを用いて作成すれば贈り物として十分かと思いますがどうでしょうか?」
「すまないが頼めるだろうか。鉱石に関してはこちらで準備させていただく、どちらに運べばよろしいか?」
「街の工房へとお願いします。名前は・・・忘れました」
そこで執事が援護をくれる。
「おそらくはダンカン工房かと。シゲヒロ様が出入りしているという話を聞くのはその工房ですので」
「ああ。そうです。ダンカン工房です。そこに鉱石を運んでください。模型を作らなければいけないため工房での時間にもよりますが五日ほど頂きたいのですがよろしいですか?」
「ああ。よろしく頼む。それでシゲヒロ殿への報酬はどうしたらいい?」
「それなら昨日奴隷商に連れてこられた冒険者の奴隷を私にいただけませんか?」
「分かった。では品物が完成したら領主館を訪ねてくれ。その時には奴隷を渡せるように準備をしておく」
そう言うと領主は笑顔になり握手を交わすとそのまま帰っていった。ちなみにシゲヒロは徹夜の疲れが原因でそのままベットへダイブして眠ってしまった。
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