第4話 魔糸

木工屋に移動したシゲヒロは予想とは違う内装にため息をついた。それを見ていたおばばが言う。


「シゲヒロ殿。何か問題がありましたか?」


「いいえ。木工というのは家具を作ることだったのですね。てっきり小物を作る場所だと思っていまして」


そんな話をしている時に奥から職人が現れた。


「小物はうちでは取り扱ってないぞ」


どうやら先程の会話が聞こえていたようで会うなりそんな言葉を投げかけられた。


「それはすみません。私が勘違いしておりまして。ところで木材の取り扱いはしていますか?」


「それなら取り扱ってはいるが、どんな木材が欲しいんだい?」


「削るなどの加工がしやすい丈夫な木材が良いですね」


「それならトレントの木だな。動く木の魔物だ。動くだけあってしなやかで魔力でコーティングすれば丈夫にもなる。だがうちでもめったに手に入らないからな。それは卸してやれねぇぞ」


「もし手に入りましたら、端材でも構いませんので売っていただけませんか?」


「それなら構わねぇが、それで小物でも作るのか?」


「はい。治療のために必要なものを作ろうかと思いまして」


「そうか、それならただで譲ってやる。端材なら俺たちも使わねぇからな」


こうしてトレントの端材を取り引きすることができた。


最後に魔力関係のお店へ案内を頼んだのだがそこは本屋だった。中には暇そうにしている女性がいる。おばばは遠慮なく中に入ると。


「ベザスタ、お客だよ」


そう言って、中の女性を覚醒させた。話を聞くと、どうやらこの女性はおばばの孫にあたるらしくそれで遠慮がなかったようだ。おばばはベザスタさんに話があるということでシゲヒロは遠慮なく中の本を見せてもらうことにした。


本の中身は四大属性の成り立ちだの、攻撃魔法の魔導書だのといった本が多かったがシゲヒロが惹かれた本が二冊だけあった。それは「魔糸の使い方」と「魔法陣の書き方」という本だ。流石に古い本のため中身を見ることは諦めたが、その本を選び終わった時にベザスタさんとおばばの話が終わったようだ。


「この二冊の本が欲しいんだけど」


「どうぞ。お持ち帰りください。お代はおばあちゃんよりいただいてますので」


いつの間にか清算を済ませていたおばばであった。


「これは借りるのであっていただくわけではありませんからね。しっかりメモに残して私が稼ぐことができるようになったら請求してください」


おばばは聞こえてないようなしぐさをし、馬車に戻った。シゲヒロもベザスタさんに挨拶をし馬車へ戻る。


こうして異世界初の買い物を終え、洋館へと帰宅するのであった。

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