第20話 依頼処理
トレントを討伐した翌日、シゲヒロは愛馬に乗って冒険者ギルドへ向かう。冒険者ギルドにたどり着くといつもは騒がしくなるギルドが今日はやけに静かだった。何かあったのかと不安になるシゲヒロだったが、いつも通りに受付嬢の元に向かう。
「いらっしゃいませ。シゲヒロ様。本日はどのようなご用件で?」
「昨日、西の森への護衛依頼とトレントの討伐が完了しましたのでその書類のサインに伺いました」
シゲヒロがそう言うと、急にギルド内は沸き立った。あとで聞いた話ではあるが、蒼雲のメンバーがトレントを討伐したという話をしたのだが信じてもらえなかったとのことだ。そこで賭けの対象になるなど、報酬で酒を奢るなど話が発展してしまったらしい。
「ではこちらの書類にサインをお願いします」
シゲヒロは差し出された書類を確認しサインをした。すると蒼雲のリーダーであるバルドメロが報酬を受け取りにやって来た。
「次も依頼があったら俺たちを指名してくれよな」
そう言い残して蒼雲のメンバーは冒険者ギルドに併設された酒場へと消えていった。ちなみに今は朝である。蒼雲のメンバーが酒場へ消えていったのを確認して受付嬢が話しかける。
「シゲヒロ様。ギルドマスターが西の森について話がしたいと伺っております。本日お時間はございますか?」
「大丈夫ですよ。今からでもよろしいですか?」
そう言うと受付嬢は頷き、シゲヒロを奥へと案内する。部屋に入ると書類仕事をしているギルドマスターの姿があり、とりあえずソファで待つことになった。十分ほど待つと。
「急に呼び出してすまないな。蒼雲の奴らがトレントを仕留めたって話が広まっちまってトレントの素材を卸してほしいっていう依頼が殺到しているんだ。それで西の森の状態を聞いて、行けるようなら何組か送り出そうと思ってな」
「そのあたりの情報は蒼雲から聞かなかったのですか?」
「冒険者ってやつは自分の話を誇張して話すからな。それに依頼者のお前さんの方が話に信憑性がある」
「ではお話ししますが、西の森の入り口にある木のほとんどがトレントでした。何も知らずに森に入ろうとすれば知らず知らずのうちにトレントに囲まれている状態となるでしょう。私たちは魔視のモノクルで周囲を確認できたため森に入らずにはぐれているトレントを二時間かけて捜索し、討伐することができました」
「話に違いはないか。そのトレントの素材の一部でも売ってもらうことはできないか?」
「私もどれだけ必要なのかわからない状態ですので売ることはできません」
「分かった。トレントを討伐したという噂を嘘だったということにする。だからシゲヒロもトレントの素材を表に出さないようにしてくれ」
もう少し食いついてくるかと思っていたシゲヒロはギルドマスターが簡単に引き下がったことに驚いた。まあ、食らいついてくる方が厄介なため頷いておいた。すると話は終わりだったようでシゲヒロは冒険者ギルドを後にして洋館へと帰る。材料も手に入ったことでこれからビエラの義足作成に取り掛かれることとなる。
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