第7話 おじさんの死

そういえば暫くおじさんの様子を見ていない。意識を飛ばそう。


(ん? 死にたくない欲が出ている。この時間に布団の中? 即席麺の袋やヌードルのカップが一杯散らかっている。金もなく食べる物のなく餓死寸前か? 仕方がないな・・・・)


仰向けで青い顔をしているおじさんを見つめていると気配を感じた。


「誰だ!」


「私です、オルゴン様、魔人トスポです」


「ライオキシンの部下のトスポか? 此処になんのようだ」


「このおじさんが死にそうなのでライフを貰いに来ました」


「ライフはお前の範ちゅうではないだろう? 私と同じ欲だろう?」


「そうです。近くライオキシン様が復活します。その為に私達がライフを集めているのです」


「私達? 他に誰がいるのか?」


「魔人のシップと魔女のマイナです」


「もう死にそうだから、勝手にライフを奪って行けば良い」


「私達は勝手に人間のライフを奪えません。それが出来るのはライオキシン様だけです。死んでから貰うのですが、なかなか死んでくれません」


「だったら、死んでから又来れば良いのでは?」


「駄目です、死んでから5分以内でないとライフの価値がありません。そこでお願いがあります。このおじさんの欲を奪って下さい」


「それならお前でも出来るのではないか?」


「それは出来ません。私達は人間から溢れ出て来た欲なら収集出来ます。オルゴン様はもうお忘れでしょうか?」


素に戻され忘れてしまった。が魔王にお願いだと! 私を明らかに舐めている!


素に少しの欲を纏っただけなので仕方がないか? 「分かった、欲を奪ってやろう」と私はおじさんの意識の中を覗いた。


小さい欲だな? 内容は何かな? あれ、母への思いだ、この前の弁解をしたいらしいが、そこまでだ! と生きる欲を奪った。


おじさんは安心して死んだ。


トスポはライフを持って消えた。


一週間程経った頃、大家が部屋代を集金に来たが返事が無く、鍵を開け部屋に入って死んだおじさんを発見した。


警察が来て調査したが事件性はなく餓死と地元の新聞に載った。


母はもう少し早く気付いてやればと後悔していた。


その後、私の範疇でない悲しみをおじさんの部屋の前に感じた。


母と同じ位の年齢の女の人が暫く佇んでいた。


アパートの名前は地元に知れ渡り、家賃は通常の半額になった。

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