第14話 殴り込みと宿主の危機
「ちょっと、行って来る」
「何処へ?」
「公園」
「学校から帰って来たばかりでしょ! 宿題は?」
「帰って来てからやる」
「友達と一緒?」
「うん」嘘をついた。
「早く帰って来なさい、それと知らないおじさんには付いて付かない。分った?」
「はーい」と私は公園に向かった。
公園には学校帰りの小学生が何人かランドセルを置いて遊んでいた。
私はジャングルジムの一番上に腰掛けて、小さい川の向こうに意識を飛ばした。
100mぎりぎりの範囲だったが逆に意識が薄くなり相手に気が付かれず
好都合だった。
立派な日本庭園があり、それに面した和室の奥に太った体の男がスーツを着て
座っていた。
あの体の丸さ、顔の丸さは? シップだ!
奴は変身する能力はあるが、体の基本は変えられない、直ぐ分かる。
それに丸い家来も大勢浮いている。訳の分からない奴とはシップの事だったのか?
奴らが来た。三人の男たちだ、マイナがリーダー格に取り付いている。
「シップさん、これで準備は整いました。○○組も○○会も仕返しに来ると思います」マイナの声だ。
「その時はこの男達に活躍して貰う」
「でも暴力団関係のライフは価値が小さくて、ライオキシン様の復活には時間が掛かってしまいませんか?」
「それは心配ない、話してなかったが、私の家来とトスポの家来を世界中に派遣してあるから5万ライフなど時間の問題である」
「じゃ、暴力団関係のライフは何故集めるのですか?」
「ライフじゃない、戦闘の武器となる凶暴度が必要になるから、暴力団を選んだ」
「それはライオキシン様がゼノンと戦う為にですか? それにシップさんは人間より凶暴度を取れるのですか?」
「そうだ、ゼノンを倒すためだ。生きている内は取れないが戦って死ぬとライフと一緒に凶暴度もとれる。この男達もいずれ死んで貰う。神の国を占領し、人間世界を支配する為だとライオキシン様は話しておられる」
「神が居なくなれば私達は自由に好きな事が出来る。あっ、それからオルゴンがこの辺をうろうろしています」
「邪魔されたら厄介だな」
「大丈夫です。宿主が分かっていると脅してあります」
「それはよかった、素だけでも一応魔王だからな」
呼び捨てにされて私も舐められたと思ったが? 神に替って人間界を支配する?その時には私は人間から欲は取れないのか? 同じ魔王の私の立場は? 如何しよう? まだ完成形にはほど遠い、急がなくてはいけない。
宿主を殺しに来るのは操られた人間だが、私が宿っている限り人間ごときは敵でないが、トスポやマイナは直接手を出せない、どんな手を打ってくるのか不明だ。
でも宿主の事を考えていたら私の成長が遅くなってしまう。
ここは一か八か抗争中に凶暴度を奪うしかない。
「だだいま!」
「手を洗って宿題しなさい」
「はーい、今日は何?」
「カレーだよ」
「やったー」
今日も和夫は会社に泊るらしい。
次の日、隣の男達はアパートから○○商事に移った。
それを母が連絡したら和夫は帰って来た。
数日経った頃、弟の意識から○○会と○○組は合同で○○商事に殴り込みを掛けることを決めた。時間は今週の土曜日の昼で、○○商事は何時も決まって出前を頼むので店員を装い門を開けさせ殴り込む予定だと分かった。
土曜日10時半頃、私は玄関を開けた。
「公園に行って遊んで来る」
「お昼までに帰って来なさいよ、変なおじさんに付いて付かない」
「分かった」
私は公園に着いて、遊具で暫く遊んだ。
公園の時計が11時50分になったので、橋を渡り、川向こうの○○商事の近くまで行き川岸の大きな桜の木の後に隠れた。
すると黒い車が2台止まり八人の男が降りてきた。
一人は店員の格好をしていて、○○商事の玄関のインターホーン越しに出前
に来たと話した。
門が開けられ男達はなだれこんだ、怒号が響き渡ったので、私は時を止めた。
そして戦闘形体になり拓魔から離れた。
屋敷の中に入って行くと「誰だ、邪魔した奴は?」
「私だ、シップ!」
「オルゴンか? ん、なんだー その格好は女子高生か! ハッハッハー」
「呼び捨てとは良い度胸だ! 素にしてやる覚悟しろ!」
また姿を馬鹿にされた。
リーダー格の男からマイナが出て来た。
「オルゴン様、邪魔しないと約束しましたね」
「約束はしてない! ようすを見に来ただけだ? ・・・・しかし凶暴度を貰って行く!」盾と剣を持って構えた。
「なにー」シップは投剣をして来たが、トスポと同じ溢れ欲で威力がない、おじさんの生きたい剣で数本叩き落し、おばさんの性欲盾で数本受けた。
「うっ」「うっ」「うっ」と「あっ」「あっ」「あっ」と声がした。
もう攻撃手段のないシップはたじろぎ後ろに下がりマイナを見た。
マイナは高く飛びあがり屋敷の外へ向かった。
しまった! 拓魔を狙われた。
時間を止めている時はマイナとかシップは宿主を殺せる。
追いかけようとしたが後ろから投剣が飛んでくるので身動きが出来ない。
「オルゴン、お前の宿主を殺しお前を素にして、ゼノンに渡らないように闇の国へ永久に閉じ込める。ライオキシン様の命令だ!」
「最初からそんな計画だったのか?」
「そうだ、お前がゼノンに捕まった時に魔の国の住民は諦めた。2個目のお前の素で魔の国の門が完全に封印されると、しかしお前は素を人間界に落した。それでライオキシン様も我々も希望が出て来た」
闇の国に閉じ込められたら出られない。
不味いぞ、早く外に意識を張ろう。
屋敷の外でマイナは桜の木の後の琢魔を見つけたようだ。
時を動かし、私が琢魔に戻ればマイナも手が出せないが、凶暴度は何も取れない。
如何しよう? あれ? 何かを見つけた私はシップに向かって飛び上がり剣を振り降ろした。
「宿主はどうなっても良いのか?」と溢れ欲の盾でシップは受けたが
割れてしまった。
マイナは宿主に近づき剣を振り上げ降ろしたが、カキーンと剣は跳ね返された。
「誰? 邪魔するのは!」
「私です」と黒い魔女が姿を現した。
「シカーナか? 何故邪魔をするのか?」
「私はオルゴン様の家来です。ご主人様の宿主を守るのは使命です」
「お前も魔の国の住民ではないか? オルゴンは魔の国の支配者のライオキシン様に敵対している。だから邪魔するな!」
「いいえ、邪魔します。こんな小さい子の命を奪うことは許しません!」
「後輩の癖に生意気な!」マイナは剣を振るって来たが、シカーナはもう1つの剣を抜き受けた。
「悲壮剣」と剣から声が聞こえ、マイナは力を抜かれたように膝を崩した。
おじさんの悲壮感から出来た剣だった。
おじさんの悲壮感がマイナの体に纏わりついた。
不味いと感じたマイナはその場を離れ屋敷に戻ったが、案の定シップは腰を落として防戦一方だった。
「オルゴン様、取引をしましょう」状況を把握したマイナはシップの横に
跪き話した。
「この男達の凶暴度はオルゴン様に差し上げます。ただ、今まで集めたライフと欲と凶暴度を持って他に移ります。それでよしとして下さい」
「分かった、そうしよう」と私が言い終らない内にマイナとシップは消えた。
11人の凶暴度を抜いた。リーダー格はかなりの数値だったが、弟は殆ど無かった。そしてついでに欲も抜いた。
時を動かし戦闘体形を解除して宿主に戻った。
男達は我に帰り、お互い顔を見て逃げ回り、8人の男が門から出て、慌てて車を発進させた。
「シカーナ、助かった。有難う」
「いいえ、この前のお礼です。でもマイナはオルゴン様がライオキシン様に敵対していると話していましたが?」
「私は敵対などしていない、相手が勝手に思っているだけで、ライオキシンが魔の国を治めると言っているが、私もライオキシンと同じ立場だ!」
「そうですね。私はこれで失礼します」と興味無さそうに消えた。
お昼過ぎて帰ったので母に怒られた。
暫くして弟の意識に繋げたら、○○商事は無くなり、3人の男は関西に
帰ったらしい。
あの時に殴り込んだ若頭と弟と男達は急な戦意喪失と恐怖で逃げるように帰って来たと話していた。
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