第17話 セレブの町
小学校六年も終わりになった頃、和夫が重役になり、セレブの町に引っ越した。
一戸建ての中古住宅で私の部屋は2階だった。
2階にもう一部屋あり夫婦の寝室だった。母も籍を入れて貰って喜んでいた。
でも両隣は立派な建物で私達の家は貧素に見えた。
右隣りは和風の庭の広い平屋の家で、中年の夫婦と25歳位の息子が住んでいた。地主で2代に渡って政治家だった。平屋の100坪近い和風の母屋と20坪位の離れがあった。そして、中年の家政婦がいた。
日曜日に家族3人で挨拶に行き菓子折りを母が渡した時、奥さんは「わざわざ、すみませんね」と言いながら心では(貧乏人が安い菓子折りを持って、このセレブの町に越して来るなんて嫌だわ)と本音が聞こえた。
そして奥から私を見る強烈な視線を感じた。
帰りに広い敷地の北側に離れが見えた。
「確か、御主人は国会議員だと聞いているが」と和夫は感心したように話した。
「でも奥さんは私達を見下しているように思えた」母は少し憤慨していた。
「まあ、仕方ないだろう。家柄が違う」和夫は諦めたように答えた。
左隣は2階建の鉄筋コンクリートの大きい家だった。
其処への挨拶には和夫は来なかった。
やはり玄関に母親と姉妹が出て来た。姉は中学2年で妹は小学校5年で二人共、私立の学校に通っていて上品で可愛かった。
母親の意識を覗いた。(良かった、隣が長い間空き家で、変な人達が住みつかなくて、それに長女が隣から誰かに覗かれていると気にしていたので、人が住んで良かったわ)
「可愛い子ね、何年生?」
「六年生です」
「公立の小学校?」
「そうです」
「でも、公立の中学校はかなり荒れているらしいですよ。私立に通わした方がいいですよ」
「はい、分かりました」と母が一人で話した。
家に帰って左隣の奥さんに意識を飛ばした。
前にこの家には夫婦と中学校二年の女の子が住んでいた。3年程前に女の子が突然行方不明になり、誘拐騒ぎになった。報道されて警察も捜査したが、手掛かりが無く一年が過ぎ母親が精神異常になりこの家を手放し他に移って行った。といわく付きの家だった。
私のこの部屋は女の子の部屋だっただろう?
あれ、丸い透明の無垢なオーブが一杯ある。
(なんで!)(どうして?)の疑問符オーブだ! 無垢で何も分からない内に殺されたのか? 此処にいた女の子か? 凄い量だ! 収集してソードを作って置こう。
「琢魔ちゃん、ご飯ですよ」と母の声が聞こえて来た。
一階の食堂に行き椅子に座ると和夫はもう瓶麦酒を開けて飲んでいた。
夕食を済ますと母に風呂に入るように言われ、パジャマに着替えて下着を持って脱衣室で服を脱いだ。
アパートより大きいユニットバスで北側に窓が付いていた。体を洗い浴槽に沈むと外に人の気配を感じたので意識を飛ばした。
やはり隣の息子だったが、覗きたいとかの欲は感じられなく、側に居たいとの感情で、それ以上は暗い闇に包まれ探れなかった。
暫く立っていて左隣の家に向かっていった。
隣の長女がお風呂に入っていたらしいが覗くことも無く立っているだけだった。
隣の娘達も無垢な吸収体を出していた。私も出しているだろうが自分の
物は取れない。
次の日、学校から帰って来ると左隣からピアノとバイオリンの音が聞こえて来た。姉がピアノ、妹がバイオリンでクラッシックを演奏していた。
クラッシックは私の頭痛の種なので意識を飛ばし無垢な吸収体を少し収集してクラッシック以外を少し演奏するように仕向けた。
ちょっと効果があったのか? 次の日に姉妹で演奏していたのは(レット・イット・ビー、ホテル・カルフォルニア、500マイル)だった。
少し世間ずれしたが、私はその歌の方が良かった。
右隣の息子が気になり、心に意識を飛ばしたが、何か黒いものに覆われて
入れなかった。
仕方なしに母親の意識に入った。
義父も政治家で、母親は政治関係の客の接待が忙しく、世間体もあり、乳母により息子は育てられた。息子は乳母を母親のように慕っていた。息子が10歳の時乳母が暇を出され家を出て行った。酷く落ち込み母親には懐かなく、部屋に籠る様になった。それでも高校までは卒業した。世間体もあり外国に留学したことにして、欲しいものは何でも与えた。それ以上は分からなかった。
息子が住んでいるだろう平屋の離れに入った。和室が3部屋連続してあり、その奥に広い作業場があり、3Dプリンターがあり、棚にガラスケースに入った女の子の頭だけのフィギュアがあった。実物大で生きているようだった。
和室の方から人が来る。息子だが頭が黒い煙に纏われて視えない。
「誰だ! 意識を飛ばしているのは?」と聞こえた。
やはり誰かに操られていたのか? マイナではない? まさか? ブラックキシン?
「私だ、オルゴンだ、お前はブラックキシンだな?」
「そうだ、オルゴンか? 何の用だ」
「魔人のくせに魔王を呼び捨てて、ため口とは良い度胸だ!」
「俺はライオキシン様に魔王にして貰った。直属の部下だったから、それに5000のライフを送ったから」
「お前を魔王にするには私とキドシンの許可も必要だろう?」
「そんなこと必要ない、ライオキシン様が魔の国を治め大魔王となる。だから私が魔王となる」
「ライオキシンが大魔王だと? それも私とキドシンの許可も必要だ! それに5000のライフは何処で手に入れた?」
「3年前、隣の家の娘だ、14歳の無垢な娘で価値があった」
「お前が殺したのか?」
「私にはそんな力はない、この家の息子に実行させて私がライフを貰った」
「息子は他にも少女を狙っているだろう?」
「あー そうだ良く分かるな? 最近隣に越して来た子とその隣の姉妹だ」
隣の娘が私の宿主と気が付いていない。
「息子は奥が深そうだが?」
「オルゴン! お前は息子を狙って来たのか? 渡さない! 第一息子には欲がない」
「嘘だ! 無垢な娘と・・・・・・と欲が出ている」嘘を言ったが?
「本当に欲はない、無垢な少女で永遠にいて欲しい気持ちだけだ」
「それも欲だ!」
「違う! 彼の心の中は暗闇の絶望感だけで、それを取ったらお前の能力を削られる。それでも良いか?」
「何故、絶望感だけになってしまったのか?」
「教える訳にはいかない!」
「じゃー シカーナを呼んで絶望感を取って貰う」
「それは不味い、待ってくれ話すから、彼は高校までは普通に通った、一年生の時に女の子の友達が出来た。かれにとっては大切な人だった。段々女の子として見るようになった時、彼女に彼氏が出来た。それがバイト先の店長で大人だった。当然男と女の関係になり、彼は純粋なので絶望と嫌悪で籠るようになった。それで性欲の対象とならない少女を捜していた。少女達はライフが高いそれを捜していた私は偶然に彼を見つけて操った」
「さあー 如何するかな?」
「オルゴン! お前には関係ない事だ! 関わるのは止めろ! それにお前の戦闘形体が薄く見えているけど、女子高生? まだ戦闘能力が低そうだ、帰れ!」
見抜かれたか? 「分かった」と私は意識を切った。
そしてシカーナに意識を飛ばして聞いた。
「ブラックキシンに会ったが、彼の特徴は分かるか?」
「はい、オルゴン様、ブラックシンの素はライオキシンと同じ人間界から出る毒素で出来ています。能力は人間を操る事が出来る、それはマイナと同じですが、意識の糸を飛ばし別の対象者を催眠で操ることも出来る。私と同種類の魔気を好みます。暗い処を好み夜に活動します。戦闘能力は毒素の投剣と絶望感の盾です。弱点は眩しい光りです」
「眩しい光りに弱いのは操っている時も同じか?」
「いえ、違います。操っている時は息子の中に居るので光は届きません。息子から離れ戦闘形体になった時です。私にお手伝い出来る事はありませんか?」
「有難う、取合えずないが、又頼む」で意識を切った。
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