第29話 漂う魂
琢魔は帰る途中で金髪に名前を聞いた。小神キランと答えた。
家の玄関に二人で入り「ただいま! お母さんちょっと来て!」と母を呼んだ。
「何、また苛められたの?」と言いながら玄関に出て来た。
「あれ、この子は? 友達なの?」
「友達だよ、私立中学校の子で退学して寮から追い出され、行くところがないので暫く泊めて欲しい」
「でも御両親もいて心配するでしょう?」
「家が遠くて、お母さんが旅行に行っていて、帰っても誰も居ないみたい」
「お金持ちのお子さんでしょう。家の貧素な食事では満足しないでしょう?」
「すみません、私は金持ちの娘ではありません。成績が良いので推薦されて編入しました。それに一週間ほどで母が帰って来る予定なのでその時までお願いします」と言われ人の良い母は承知した。
夜7時前に和夫は帰って来た。
食堂の椅子に私と座っているキランを見ると「この子は?」瓶麦酒をコップに注ぎながら聞いた。母が事情を説明した。
「連絡付くまで泊って良いよ」珍しく機嫌よく話した。
「金髪だが染めているの?」
「いえ、染めていません。自毛です」
「えー 顔は日本人みたいだけど、本当に?」信用していないようだった。
「本当です。疑っているなら、下の毛も金髪なので見ます?」
「えー 分かった、分かった」和夫は驚いた顔して焦って返事をした。
夕食も終わり、琢魔とキランが一緒に風呂に入った。
浴室から「やっぱし、キランちゃんの下の毛は金髪だ!」と琢魔の声が聞こえて来た。今時の子は? と和夫は呆れた。
キランは琢魔の部屋で一緒に寝ることになった。
前の家主が置いていったベッドがあり、キランはそれに寝ていた。
「ねえ、琢魔ちゃん、このベッドから凄く悲しい思いが伝わって来る」
「あっ、そうだ! そのベッドは隣で殺された女の子が使っていたものだった。ごめん、私にはそういう事が感じないので分からなかった。私のベッドで一緒に寝よう」
キランは琢魔のベッドに嬉しそうに潜り込んだ。
まだこの世に未練があるのか? 魂が漂っている、私は魔気が上がったので魂の主と接触できた。
私立中学校2年生で背も高く可愛くて、両親に大切に育てられていた。
(友達との誕生日会、ピアノの演奏会、避暑地の別荘での暮らし、外国旅行の思い出が溢れていた。ある日突然催眠状態になり、知らない場所で命を奪われてしまった。これから先に楽しい事が一杯あったはずなのに? 何故私だけが?)
キランの制服が同じ私立中学なので目覚めてしまったのか? 意識を入れよう。
(誰? 私に話し掛けようとしているのは?)
(私は天上界の者だ、何時までも其処に漂っているのはいけない。
天国に行きなさい)
(でも、お母さんの事が心配で此処からも動けないし、天国にも行けない)
(分かった、私が自縛を解こう、そして、お前をお母さんの処へ送る。30日間一緒に過ごしてから天国に行きなさい)と魂の主を母親の元に送った。
それ以来琢魔の部屋の魔気は消えた。
次の日から魔気が無くなったベッドにキランは寝た。
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