第6話 ストーカー
若い男は零時には必ず帰って来た。
そして、ノートパソコンにデジカメから写真データーを入れていた。
今日の日付を入れ、写真の下に言葉を添える。
写真は制服を着ている真面目そうな可愛い女の子だった。
目線がカメラに向いていないので隠し撮りだと感じた。
写真を見る目が異常なので、意識を入れた。
(欲しい! 欲しい! 彼女の全てが欲しい! 私だけ見て欲しい!)
男の前の記憶が蘇った。ガッシャとコンビニの床に俺の買うものが散らばった。
誰かと接触したようだった。
「すみません! ごめんなさい!」と散らばった物を拾い俺の手の上に置いてくれた。その時に指が触れた。
「うっかりしていました。大丈夫ですか?」と下から覗き見る可愛い顔に惹きつけられた。
本当に心配している。姉以外にこんな風に俺の事を気遣ってくれる人がいたのだ。
「あっ、大丈夫です」と小さい声で答えた。
それからコンビニで良く見掛けた。
後を付けて名前と家と学校も分かった。
俺と同じようなアパートにいて母子家庭だった。
中学生の弟がいて、母親は何処のスーパーでパートをしていて夕方6時半頃に帰って来る。
暫くして、いつものコンビニで彼女がアルバイトしている姿を見たが、少し嫌だった。
彼女には余り他の男と接して欲しくなかった。
バイトの時間は16時から19時までだと分かった。
彼女の事をもっと知りたくて、ワークショップで作業着を買った。
それを着て彼女のアパートのドアの前で立ちチャイムを押した。
弟がゆっくりと警戒しながらドアを開けた。
「ガス会社ですが、警報機の点検に来ました」弟は直ぐに信じて中に入れてくれた。
台所の床にある警報機を点検する振りをして、コンセントからコードを抜き、盗聴器用の二又コンセントを刺した。
終わりましたと弟に告げて玄関に向かおうとした時、居間に新しい小さい仏壇が見えた。そこに中年男の写真が置かれていた。
それから毎日夜七時から十一時の間に彼女のアパートの近くで家族の会話を聞いていた。
会話から分かった事は父親が会社員で3か月程前、帰宅中に横断歩道で車に跳ねられ亡くなった。
ひき逃げ事故で犯人は捕まっていないので保証金は出なかった。
娘は学費と少しでも家計を助けるためにバイトをしたのが実情だった。
私はまだまだ欲が大きくなり質が良くなると感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます