第3話 母の生い立ち

母の父親は女好きで浮気癖が酷く、母が3歳の時に離婚して義理の母を何人も替えていた。


母は幼い二人の弟の面倒を見ながら家事もこなした。


無事に高校を卒業したが、付き合っていた男の束縛と暴力が酷く、叔父のいる街へ逃げて行った。


その町のレストランでウエートレスをしていて、たまに昼食を食べに来る和夫と知り合い、一緒に住むようになった。


和夫の両親は反対し、まだ結婚式も挙げず、籍も入っていなかった。


私の大好きな魔気の素が沢山あるが母は欲が無い。此処まで辛い思いをしているのに、恨み、怒り、妬みも無い、可笑しい? 長い目で見てみよう。


夕方5時頃に和夫が帰って来た。


(えー 女を連れているぞ! これは修羅場だ!)


和夫が連れて来たのは、派手な服の化粧が濃い中年のおばさんだった。


パチンコ店で偶然に出会った麻雀仲間で、麻雀まで時間があるので家に連れて来たと話していた。


「なんか、食べる物ないか?」


「まだ、夕食の支度をしてないのでありません」


「何でもいいから食べられるもの無いか?」


「即席メンならありますけど」


「それで良い、二人分作ってよ」


「悪いね、奥さん」と今にも落ちそうな付け睫毛を上下させておばさんは煙草を咥えた。


和夫はこの中年のおばさんとは肉体の関係はなさそうだった。


即席メンを食べ終わると和夫は「今夜は遅くなる」と言いおばさんと出掛けて行った。


修羅場には成らなかった。まともな魔気が貯まらない。


おばさんから出ていた和夫への性欲を取ってやった。


和夫の行動も察しが付いていて、麻雀をやり、泥酔しおばさんと関係を持つ、だから、おばさんの性欲を抜いた。


暫く性欲は湧かないだろう? 


(でも待てよ? 関係持たせて置いて母親との修羅場? その方が魔気の価値が高いが母親はやきもちは焼かないだろう)


どうゆう訳か母の味方をしてしまった。魔王としては失格だった。


零時頃、何時もより早い時間に和夫は帰ってきた。


おばさんの性欲を抜いた効果があった。


泥酔していたので、玄関に座り込みそのまま横になった。


何時ものことで母はサンダルを脱がして、両脇を抱えて寝床まで連れて行った。


和夫は小柄で身長は160cm、体重は50Kを少し超える軽さだった。

シャツとズボンを脱がしてタオルケットを掛けると和夫は寝息をたてた。


(この男には欲はないのか? 楽な生き方だが、ギャンブルで少しの刺激を求め、毎日同じ生活を繰り返している。大金が欲しいとか、父親の会社で偉くなりたいとか思わないのか? 和夫からも欲の皮は取れそうもない)


二時頃、私の体が空腹で泣き始めた。


母親が起きて来て眠そうな目でベッドの中を覗いてきた。


(ゆっくり寝ていたいのに嫌だよね、怒れ、怒れ、そして、私に怒りをぶつけろ! これで怒りの皮が・・・・)


期待していると「あれ、琢魔ちゃんお腹がちゅいたの? 少し待ってね」と台所で支度して私に哺乳瓶を咥えさせた。


飲み終わると私を抱き上げ、背中を優しくトントンと叩き、私がゲップをするとベッドに戻した。


それから母親から私への怒りは取れないと悟った。

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