入園

 月日は、あっという間に過ぎるものだ。咲来は保育園を出て、幼稚園に入ることになった。その頃には、コロナウイルスの猛攻も弱まっていて、花見ができる季節になっていた。


同じ保育園の子も、知らない子もたくさん入ってくる。それが幼稚園ってものなのかもしれない。私が気になったのは、「ペア」として、一緒に手をつないだ男の子。その子は、なんかすごい良い顔してて、めっちゃ可愛いの。背も高いほうで、賢そうだったな。


今年は、サクラはすぐに散った。今まさに、大吹雪がブランコを襲っていたもの。そのブランコの前で、私たちは、最初の写真をパシャリと撮った。

その時の横も、やっぱりあの子だ。

「ねえ、君の名前は?」

え?!なんか、聞かれた。

「えっとね、なみきさくらっていうの。よろしくね」

「こちらこそ、よろしくね」

別に、声をかけられたからって、ドキッとしたりはしなかった。


 家に帰ると、まず、お母さんに話したのは、このことだった。

「あのね、同じいるか組のね、大石俊一朗おおいししゅんいちろう君っているのね、あの子、なんか、かわいくて好きなの」

「へぇ・・・・・え!すごっ!!」

何がすごいのか、よく分からなかった。

「あなた、すごいわよ。咲来の初恋が始まったみたい!」

玲子はそのことについて、何か話していた。

「すごいじゃないか、これからどうなるか?」

お父さんも感心してしまっていた。


***

んで、ある日のこと。私は、何やらお手紙をもらった。

「これ、読んでみて」

俊一朗は、もじもじしながらその手紙を渡した。

「家に帰ってからね。それじゃあ、バイバイ」

俊一朗は、私には何も言わせずに帰っていった。

***


その時の手紙をまだ読んでないやと思って、封を切った。

手紙には、結構キレイな文字(幼稚園レベルで)で彼の思いがつづられていた。

『さくらちゃん、げんき?あのね、ぼくね、さくらちゃんのことがすきなの。さくらちゃんはかわいいし、うんどうもできる。ペあで、てをつないだときにね、すきになっちゃったの』

私は、普通に仲良しの証だと思って、お返事を書いた。

『しゅんいちろうくん、ありがとう。わたしも、しゅんいちろうくんのことだいすきだよ!かっこいいし、おべんきょうもうんどうもできちゃうもん。それいがい、もういうことないよ。なかよくしてね』


 次の日、私はそれを俊一朗のところに持って行った。

俊一朗はその場で手紙を読み、にっこりと笑った。それからは、いつも通り遊び始めた。

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