高校転校②

 恋をした――当然、あの男の教師に。めっちゃイケメンだし、めっちゃ優しいし。言うことはない。私はあの人の元にずっと居たくなった。18歳になったら結婚できる。16歳だから、あと2年経てばいい。そう、私は高2なんだから。


「あの、私は先生に甘えていいんですか?」

「当然だよ。まあ、授業はちょっと厳しいかも知れないけど、大変なことがあった身だから、ちゃんと保護するよ」

「よろしくお願いします!!」

全部言い終わった。その瞬間、耳たぶが熱くなり、やがては頭の全ての箇所に火が回った。


 教室に案内されると、まず目に入ったのは自分の席。先生が真ん前に見える場所だったから。隣の席は女の子だ。良かった、男の子だったら何をするか分からないもん。

「私、並木咲来。あなたは?」

「えっと、千賀基実ちがきみです。よろしくね。えっと、この後ろは、私のボーイフレンドの市川潤夫いちかわじゅんお

「よろしくなっ!」

市川君は、キラッキラの笑顔でガッツポーズをして見せた。


 運命的な恋煩いをしたかもしれない件について――。私は、世に言う二股の恋愛というものをしてしまったかもしれない。先生、市川君。でも、市川君に恋をすると、悩みを色々話せる基実ちゃんを敵に回しちゃうから、好ましくない。なら、先生を見るけど、でも、やっぱ市川君もキニナル・・・・・。


数日が経った後、私は基実ちゃんに声をかけられた。

「ねえ、咲来ちゃん潤夫狙ってない?」

「は?え・・・・・」

「そうでしょ?顔に書いてある」

冷ややかに語りかけてくる基実ちゃんの顔は、今まで見たことのない顔だった。

「酷い、私はスポーツが大好きで、他の女子とは趣味が合わないから、咲来ちゃんが初めての女友達だったんだよ。なのに・・・・・」

「いや、そんなこと・・・・・」

「ある。まあ、いいよ。私が勝つから」

そのまま、基実ちゃんは背を向けた。声をかけようとしたが、涙ぐんで声が出なかった。


 そんな時なのに、私は告られちゃった。

「ね、ねえ。僕を好きになってくれないかな?」

告ってきたのは、私の近くの席の子だけど・・・・・内気で、目立たず、がり勉のような感じの男子。名前は・・・・・

「僕の名前は上田太一。ねえ、お願い」

嘘でしょ~~~!!これはさすがに大変だよね。

「えっと・・・・・」

「お願いだよ~~~!!!!一生のお・ね・が・い!」

こいつ、ぶりっ子かよ。気持ち悪い・・・・・なのに、私はお人好しだ。

「考えときますね・・・・・」

「わ~い!」

普通、声は出さないだろうというところで、彼は無邪気に喜んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る