中学校入学①

 好きになった人は、今のところ、全部で四人。俊一朗、陸斗。そして、特に目立った行動はしていないが、好きになっていたのが、同じクラスの滝川亮二たきがわりょうじ田所廉介たどころれんすけだ。ホントは、告りたかったけど、出来なかった。未練が残るとはこういうことだ。


この、文章力がついてきた年の女の子には、恋愛小説は付き物だった。現代ものの、ひねりなしの恋愛小説を片っ端から読み漁っていた。

コメディを交えたラブコメや異世界ものの恋愛、ホラーを交えた恋愛、そもそもホラーじゃないもの、などなど、純粋な恋愛ではないものは一切読まなかった。


***

 卒業式の時、私は泣いた。と、言っても式のときではなく、式が終わってからなのだ。


あの、小さな桜の木の下で、私は俊一朗からあることを告げられた。

「なあ、俺、引っ越すんだ」

唐突に言ったから、訳が分からなかった。

「え・・・・・?どこに?」

「札幌」

頭を強打された感覚。初恋の相手が、そして、勉強してやり直そうと言った。約束を果たせないの・・・・・こんなに、本を読み漁ったのに。


ギュッ

俊一朗は、誰もいない場所で思いっきり私を抱きしめた。

「またどこかで会おうな。咲来のこと、絶対に絶対に忘れない」

「私もだよ・・・・・」


 そうやって、感動の瞬間を共にしていた時に、滝川亮二に呼ばれた。亮二は、私が今恋の気持ちをチャージしている相手。


「お前、どこの中学行くんだ?」

「私は、八鳥はっとり中学だよ」

「そうか・・・・・俺は、藍川あいかわなんだ。母さんがそこに行けって言うから仕方なく受けた。そしたら、受かったんだ」


藍川中学は、有名な私立中学だ。受験で選ばれたエリートが集う学校。

そんないい学校に彼が行ってくれるのは良いことだった。でも、藍川は遠いから、私とは会えない。恋人が一人ひとりと離れていく。


「なあ、咲来はLINE持ってるか?」

「持ってない。スマホがないもん」

「そうか・・・・・じゃあ、神様に頼むしかないか。もし、何かあったらLINE載せとくから、連絡して。じゃあな・・・・・」

抱きしめることは、私が嫌だと思ったからだろうか?頭をそっと撫でて、彼は去っていった。

***


 小学校にいるうちに、三人の恋人が私の元を去っていった。残っているのは、田所廉介だけ。でも、彼はよく私のことを叱ってきて、すごく嫌われている感じがする子。なんか引かれるとこがあるから、好きなんだけど、その魅かれるとこが分からない。


「咲来、出るぞ」

「え、はーい」

父さんに促されて、私は制服の蝶ネクタイを締めて、外に出た。

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