中学校入学②

 桜のトンネルを抜け、車を降りると、そこには大きな校舎が私を迎えた。学校の神様がやっているのか、歓迎しますと言っているように桜吹雪が髪に舞い降りる。

「あら、大きな校舎ねぇ。ここ、結構来る学校らしいから、組も多いんだろうね」

玲子は感服を含んだ声を上げた。

「そっちはどうなんだ。恋の相手もたくさ恋人をめぐって戦う友達もたくさん見つかるといいなめぐって戦う友達もたくさん見つかるといいな」

「お父さんは私の恋バナばっかするじゃん!!」

思わず、私らしくない怒鳴り方をしてしまった。


大きな体育館に一年生は下見で入った。

「うわ、大きい・・・・・」

私の、親友、土井花実どいはなみは言った。

花実は幼稚園の時に出会って、名前が似ていて、春が似合う、そのようなことから仲良くなった。


「ここで、思いっきりバスケしたら楽しいだろうな」

そう呟いたのは、いかにも筋肉質な男だった。

「サッカーでも行けそうだぜ」

「野球もできそうだな」

そこら辺の、筋肉男子はみんな言う。

その中で、私が後ろ髪を引かれたのは、テニスがめっちゃできそうだなぁ、と言った高身長の男子だった。


 まだ、小学生の感覚が残っていて、中学校には慣れれない。

「一年生、入場します」

おっと、気づけばその合図をかけられていた。私は出席番号が真ん中の方だからまだ大丈夫だ。

私が入る番がやってきた。隣になったのは、いかにも、しょうもない顔の男子だった。


校長、教頭、理事長、来賓、児童代表・・・・・長々と続く挨拶の波は止まりそうにもない。

小学校の時の挨拶は、まだ波浪のようなものだ。今はもう、まるで津波だった。


「新入生代表の挨拶をしてもらいます。中岡慎太なかおかしんたさん」

はい、という大きな返事が返ってくる。そちらを見ると、それはさっきのバスケ男子だった。

岡村凛おかむらりんさん」

はい、と今度はしっかり者っぽい声が飛んできた。


「「宣誓!僕たち、私たちは、この素晴らしい校舎、先生、在校生に育まれたことを幸せに思います。その中で私たちは五つのことを頑張ります。一つ目は・・・・・」」

やっぱ、この子たちは長いじゃんか。中岡は少し辛そうな顔をしているから、決めたのは森岡だろう。


 私にとっては大荒れの式が終わり、一年生は教室に戻って先生の話を聞いていた。

先生は、古刀善丸ことうよしまるという名前で、ニコニコの顔を持った、優しい先生だった。話も短くて、私たちによく気を使ってくれる。この先生をみんな気に入ったようだった。

「あの、先生、ここが分からないんですけど・・・・・」

私が手を挙げると、先生はにっこりとうなずいた。

「君、かわいいね」

「え?」

意味が分からず、私は手を下ろせなかった。

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