大学卒業②

 私は、一気に詰め寄った。

「ねえ、ミナト。それって、まさか私を思ってないってことじゃないよね?」

「は?そんなわけないじゃんか。何を誤解してんのか知らないけど」

「ハッタリだよね、今言ってること?」

「酷くないか?俺は純粋にお前を愛している。まあ、お前が俺を思ってないなら、どうでもいいけどよ」

「それは、私のことどうでもいいって思ってるってことじゃないの?」

言葉が止まらない。私の火攻めは続いた。

「チッ、もういいぜ。忘れてやるよ、仕方ないから。お前に思われてないってことが分かったからな。やっぱ、マッチングアプリは間違ってたな」

ミナトはそう吐き捨てて、チャイムと同時に教室へ帰っていった。


――私はその時、ミナトにフラれたのだと思った。涙が止まらない。ボロボロと地面へ落ちてゆく。彼を呼び止めようとしたけど。勇気がないから、怖いから、殴られそうだから・・・・・フラフラと教室へ戻るしかなかった。


 実のことを言うと、明後日が卒業式だった。でも、そのうちの一日を恋人にフラれたという理由で休んだ私は一体どうなるんだろう。そもそも、航空宇宙に関する仕事に就くことはできるのか。先生にはこう言われた。

「ビミョー」


そんな私は、必死で勉強してた。ホントに、必死。そのかいあってか、航空宇宙の仕事に就くことができそうだ・・・・・ということ。で、聞かれたのは大学院に行くか行かないか。これは、迷うところ・・・・・でも、私は決意した。大学院に行こう。私はそう決意した。


 てなわけで、卒業式がやってきた。でも、卒業式はたいしてつまらなかった。唯一、気になったことは在校生への呼びかけをする代表がミナトだったこと。そして、もう一人が春希だったこと。たまに、ミナトは春希の方をジロジロとにらむ。それが、私にとっては救いで、安堵だった。


大学院への引継ぎのようなものがあるのだが、大学院側の代表は淳奈だった。で・・・・・大学側の代表が私、咲来だった。ドキドキドキドキ。私はミスってみ吸って、ただミスって。でも、何とか通した。

「よく頑張ったね。これから頑張ろう」

小声で、彼女は語りかけてくれた。


 そんな、最高の卒業式に水を差したのは、平野涼子ひらのりょうこだった。

「ねえ、あんた私の春希を奪ったやつね」

え?そんなわけがない。私は、彼に追い掛け回されてるだけ。本当に好きな子は別にいる。

「は?私は奪ってなんかない・・・・・」

「嘘よ。春希があんたに浮気してるってこと、私知ってるから」

「いや、そうじゃなくって・・・・・」

「そうじゃなくって何?まあ、いいわ。あんたは私の目の敵だから」

え、ちょっと。ひどくない?でも、私は必死に弁解を続ける。

「ホントに違うくて・・・・・」

「もう遅い。私は、すでに宣戦布告したから。春希は私が手に入れるわ」

ほんの数秒の会話で、勝手に言いがかりをつけてきた。そんなわけないのに・・・・・。名札には、平野涼子と書いてあった。彼女、私を敵認定したらしい。大学院に入る前から、波乱の胸騒ぎがした。

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