大学院②
勝ちました。一本勝ちだった。なかなか手ごわくて、延長戦になったけど、大外刈りで一本勝ちできた。
「チッ」
平野はそう言って、礼もせずに、更衣室へ走っていった。畳に水滴を落としながら。顧問の先生が礼を白と注意したが、そんなもんを聞く状態ではなかった。平野さんは少し残念だったなぁと私は考えてしまう。
「良かったぁ、咲来ちゃん!」
「強かったよ!!」
二人は、嬉しい言葉をたくさんかけて来てくれる。
「ありがとう・・・・・」
照れくさくなって、私はクスッと笑う。
「でも、平野さんも苦しいだろうね。春希は何というか・・・・・」
「そんなこと言わないの。咲来はお人好しすぎるよ」
「どうだろうね・・・・・」
そう言って、私は相手がいないのに、礼をした。そして、更衣室へ一歩一歩歩いていった。
そんな時に、ある人物からLINEをもらった。
「久しぶりだから、会わない?」
15文字に満たない、短文に私は舞い上がった。更衣室でスマホが震え、着替え終わってから、LINEを開くと、愛するミナトからのお誘いだったから。
「いいよ!!!!どこに行くー?いつ空いてるー?」
それから、試合とか大学院とかの色んな写真を送った。
何そんな喜んでるの。
更衣室から出て、しばらく美紗麻子と遊んでから、自転車をこいでいると、願ってもない人物に会った。本当に願ってない。悪い意味で。
「いや、別に?」
「ならいいけどよ。ああ、そうだ。話がある。ココだとあれだから、喫茶行かないか?」
「え~?何で、私今から勉強しようと・・・・・」
「いいからついてこい」
仕方なく、私は自転車を帰路と逆方向に回らせた。
喫茶店に着くと、願ってもない人物・・・・・立花春希は口を開いた。
「俺さ、引っ越すんだ」
「へぇ」
「もっと大した反応しろよ」
いや、したいっちゃしたかった。ヤッタ~~~!!と喜びたいけど、そんなことしたら殴られる。こんなところでそんなトラブル起こしちゃ大学院でも問題になっちゃうから。
「で?それがどうしたの?」
私が訊くと、彼は即答した。
「俺についてこい。一緒に住まないか?」
「えぇぇぇ?!?!?!」
とんでもない声で答えちゃった。まばらな客と店員に、一斉にこちらを見られてしまった。この春の陽気に、これはないということか。
「住まねぇと許さねぇ。お前が俺を好きにならないと俺は許さねぇ。お前がいないと俺は自殺する」
そう言って、彼は私をぶつ準備をしている。
「お前、いい加減にしろよ!」
そう言って、春希は私を平手打ちした。
「早く返事しろ!!!!」
もう我慢できなくなった。
「うるさい!!バカハル、はっきり言うね。私はあんたのこと大嫌いだから」
そう言って、私はコーヒーを飲み干し、余ったパンは適当な入れ物に入れて、店を出て行った。
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