高校入学②

 俺と付き合って――

唐突な出来事だった。この男子、恐らく狂ってる・・・・・と思うくらい、びっくりする出来事だった。こんなこと、ラノベの世界だけで起こることだと思ってたのに・・・・・。


「なあ、聞いてる?」

「あ・・・・・え?!」

「ひょっとして、びっくりしてる?」

「当然」

そんなこと、わざわざ聞かなくても分かるだろう。ビンタしてやりたくなったけど、我慢した。

「おい、そこ聞いてるか!!」

先生の怒鳴り声が聞こえて、急いで視線を教壇に向ける。

「ちぇっ」

隣の男子の舌打ちの音が聞こえた。


 入学式は、あれのやつのおかげで、ちっとも面白くなかった。例年なら、笑顔でワクワクしながら臨むところなのに。

中学の時は、古刀先生のことで大変だった。でも、今年は始めっからこう。一波乱ある学校生活になりそうだなぁと思った。


「新入生、退場」

私にとっては、それがとても冷ややかに聞こえた。なぜって、ここから変えれば、また隣の男子にいろいろ言われなきゃいけないからだ。


 教室に戻ると、隣の席には、くたびれたように待っている奴がいた。

「おかえり」

もう、何も話したくない。こいつはもう嫌だ。

「なあ、聞いてんのか?」

無視。

「お前なぁ」

苛立っている口調。何だよ、こいつ。本当にバカなの?!


「おい、知之。やめろ、こんなかわいい子に」

後ろの席から声が聞こえると思い、振り向くとそこには、不良風の格好の男子がいた。

「何だよ、お前は口出すなよ」

イライラしているのか。

「だから、この子困ってんだろ。それでも高校生かよ」

チッとさっきより強い舌打ちが聞こえた。

「ありがとうございます、私のために・・・・・」

「うん、大丈夫だよ。あんなやつに、

笑顔で言った彼には、どこか野心深い目があった。


「どおりで変だと思った。お前もか」

「はっきり言うと、俺だけじゃない。良臣よしおみもそうだし、順敬じゅんけいもそうだ」

「はぁ~?!」

うわぁ、これヤバいよ。私、とんでもない人らに巻き込まれたかも・・・・・。


 あとで、麻子ちゃんに聞いた。どうやら、あいつらは有名な不良グループらしい。そんな不良らに私は狙われてるって・・・・・全然平穏な学校生活じゃないじゃん!!

「で、さっきやつに話を聞いたんだけど、どうやら柔道教室で稽古をしている咲来ちゃんを見たときに、メンバーの何人かが惚れたんだって」

私は、小学校から柔道をしている。好きでやってるわけじゃないけど、友達がたくさんできていて、楽しい。

「って、うわぁ・・・・・」

麻子ちゃんが何か声を出した。

「おい、お前。ちょっとこっち来い」

気づけば、デカい不良が私を見下ろしていた。

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