第17話 後輩②
その足で「COLOR ENERGY」に向かった。店はまだ準備中だ。
シエルさんにパワーストーンのブレスレットを見せる。シエルさんは少し眉をひそめるような仕草をした。
「どう思います?」
「うーん……読みづらい」
「読みづらい……? とは?」
「石同士が気配を消し合ってるというか……この色の組み合わせの意味がよくわからないですね」
シエルさんは奥から仕事道具を持ってくる。
「一旦バラしてみましょう」
そう言うと、元の色並びを図に書いて残し、数字をふって石を色分けした。
「うーん。」
読みかねているようだ。彼は暫く石を見つめていたが、携帯を手にすると奥に入り、誰かに電話をかけていた。
暫くして明日香さんがバタバタとやってくる。
「早めにお昼休みもらって来たわよ。何がどうしたって?」
シエルさんがパワーストーンと、その並びを描いたメモを見せた。
「これを、透子の後輩が?」
私は頷く。
「これは、よくない色だなぁ……。シエルの読みが当たってるかも」
明日香さんが言う。
そこへ買い出しに行っていたサトルさんが帰ってきた。
「あら? どうしたの?」
不思議そうな顔をする彼女に、明日香さんはパワーストーンの色を見せる。と、サトルさんが1つ取って光にかざした。
「偽物ねえ。色を変えてある」
「やっぱり」
シエルさんと明日香さんが顔を見合わせる。
「私は本当の色の方が見えちゃうから、偽物の色は、はっきりわからないわ」
サトルさんが言う。
「そうなると、透子か」
明日香さんが私の方を見た。
「え?」
「この石たちの外側の色と、本当の色を言っていってくれる?」
お鉢が回ってくるとは思わなかった。何せ私の色見は、他の3人と比べて時間がかかる。
「いいから。とにかく見て。」
明日香さんにせっつかれて、見てみることに。
「これの外側はこの色。でも、えーと、中の色はこれですね。」
そうやって1つずつ色を見終わった頃には、明日香さんの昼休みも終わろうとしていた。
「あ~、もう! 休み時間終わりだ~。いいわ、仕事帰りにまた来る。シエル、あとお願いね!」
そう言うと、明日香さんはバタバタと帰って行ってしまった。
「何か悪いことしちゃったなぁ……」
呟く私の肩を、サトルさんがポンポンと叩く。
「ありがたいわ。私一人じゃ自信がいまいちなくて」
そこからサトルさんが見た色と私が見た色の答え合わせ。
「本当の色の方は一緒ね。」
「偽物の色の方も僕が見てるのと一緒だ。」
じゃあシエルさんが色分けしたものが、本当は違っていることになるので、サトルさんと私で本当の色に色分けする。
「なんていうか……どす黒いですよね……」
数色の濁った色と真っ黒な石。
「気味が悪いわね」
今二人が見えている色を外側の色通りに並べ直す。本当の色の配置を色鉛筆で描いていきながら。
「これは……」
シエルさんが考え込む。
「カルト集団の人間から買ったって言ってましたよね、このパワーストーンのブレスレット」
「ええ」
「
「そんな!」
私は慌てる。
「それじゃあ沙織は? 沙織はどうなっちゃうんですか?」
シエルさんは、私に向き直ると、
「なるべく早く正気に戻す必要があります。勿論、ブレスレットは返してはダメです」
そして、ちょっと待つように私に言うと、そのブレスレットと外側の色が似た感じのブレスレットを持ってきた。
「彼女に渡して下さい。魔除けと浄化の石でできています」
「わかりました。ありがとうございます」
それを受け取り、私は大学へと走った。
沙織、お願い、変な方へ行かないで。闇に囚われてしまわないで。待ってて。お願い。
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