第22話 解放

「あいつ、もう許さねえ」

 一磨が呟くように言う。

「行くぜ、シエルさん。行くぜ、みんな!!」

 皆に声をかけた。

「明日香と花梨はサトルさんを頼む」

「ラジャ!」

 花梨が元気に答えた。

「色読みと浄化者だけで大丈夫なんですか?」

 透子がたずねる。

「明日香には、攻撃系の技があるから大丈夫。わかんねえけど、色を組み合わせることで光を組み立てるらしい。まぁ、俺等みたいに瞬間的にじゃないだけだな」

 なるほど。色読みらしいと言えばらしい技。光を組み立てなければいけない分、透子や一磨よりも光を撃つ速さにおいては劣るらしいのだが。

 

 扉の奥にあったのは広い応接室だった。が、「会長」の姿はない。

「え?」

「何……?」

 透子が入ってきたドアを慌てて開けた。

「どうした、透子?」

 一磨が驚く。

「こういう時に後ろのドアがバタンって閉まって毒ガスが……とかよくあるパターンだよな? と思って……」

 透子は苦笑いする。が、

「いい心がけだ」

 一磨は真顔で言った。


「それにしてもどこに行ったんだ?」

 一磨が壁をガンッと叩く。

「一磨さん、それがいいかもしれません。」

 シエルが言い、周囲の壁を叩き始めた。

「なるほどな。」

 4人で手分けして叩いていると、

「一磨さん、ここ!」

 透子が叫んだ。

 一磨が叩いてみると、その辺りだけ、音が違う。

「よし、みんな、どいてろ。」

 そう言って一磨は壁を蹴り抜いた。


 ガンッ!!


 大きな音がして壁が崩れ、通路が現れた。人一人しか通れそうにない上に真っ暗だ。何が潜んでいるかわからない、暗闇を進むのは、皆、流石に戸惑いを隠せない。

「光を……」

 透子が口を開く。

「光を撃ちながら進みませんか?」

 透子はパァンと光を中に撃ち込んでみた。思ったとおりだ。光なので、周りの壁が壊れたりすることはない。

「なるほどな」

「結構深そうでしたね。よし、じゃあ行きます」

 透子が行きかけると、一磨が引っ張った。

「待て、透子。師匠より先に行こうなんざ、100万年早ええよ。お前は2番目。次が清羅で、最後がシエルさん、でいいですね、シエルさん?」

 後方から敵が来た時の事をことも一磨は考えてある。

「そうですね。ベストだと思います」

「ほらみろ。行くぞ」


 一磨が光を撃ちながら進む。思ったより深く、思ったよりくねくねと曲がっている。光を持って追いかけてこられても対処できそうな攻撃スペースまである。一磨は、ゆっくりと前に進んだ。

 一方、清羅はあまりの綺麗さに感動していた。一磨が放つ光の反射した一部が、透子の身体を通ると、虹のように幾つもの色になって、あたりを包む。思わず状況を忘れて、後ろからきているシエルに

「綺麗ですね」

 と、話しかけようとして目を見張った。

 シエルの周りも明るかったのだ。見たこともない優しい優しい色の光。ああ、これは、シエルさんのオーラの光なんだ。なんて強くて優しい光なんだろう。清羅は、涙が出そうになった。私はなんて頼もしく優しい仲間たちに囲まれているんだろう……。


 「なんてこった」

 真っ暗な通路を抜けて出てみると、そこは、建物の裏側だった。

「これは、つまり……」

「逃げられちまったってことだろうな」

 一磨が傍の岩にドスンと座って溜め息をついた。

「……でも、沢山の人たちを助けることはできたんですもの。よかったと思う」

 清羅が言う。透子も隣で頷く。

「さ、皆さんを帰しに行きましょう」

 シエルが言う。

「よし! 戻るぞ!!」


 勧誘され囚われていた人達は正気を取り戻していた。奴らの仕業だったのだろう、圏外だったはずの携帯は普通に繋がるようになり、泣きながら電話している姿が其処此処そこここで見られた。

 透子は沙織のもとへ走る。

「先輩、私……」

 目に涙をいっぱいに浮かべている沙織を力いっぱい抱きしめる。

「大丈夫よ。もう大丈夫。怖かったね」

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