第34話種目決め

秋。この言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか?食欲の秋、読書の秋、筋トレの秋、色々あるだろう。そして俺の通っている学校にも筋トレの秋…いやスポーツの秋に関するイベントがある。そう。みんな大好き体育祭だ。


「じゃあリレーメンバー後1人だが誰かいないか?」


担任の教師が問いかけるが誰も手を挙げない。まぁリレーなんて目立つし責任も重大だ。


体育祭の種目決めを始めて約1時間。いよいよ最後というところまで来たがその最後が中々決まらない。これが決まれば帰れるということもあり、みんな少し苛立ち始めている。


「別に他薦でも良いぞ。誰かいないか?」

「それなら」


坂口が手を挙げる。坂口は既にリレーメンバーに入っているため他薦ということだろう。


「坂口が推薦するなら問題ないな。誰だ?」

「佐々木です」

「佐々木か。分かった。決定だな。じゃあこれで種目決め終わるからな。気を付けて帰れよ」


そう言って教室を出て行ってしまう担任。異議を唱える暇もなかった。彼も早く帰りたかったのだろう。だが少し待って欲しい。俺の意見は?てか坂口。なぜ俺を推薦したんだ。


「佐々木頼んだ」

「お前ならできるよ。頑張れー」

「頑張ってねー」

「いつも良い思いしてんだ。こんな時くらい頼むぜ」


みんな好きなように言っている。自分じゃなかったからと調子の良いやつらだ。しかしもうしょうがないだろう。今俺が出ないと言ってもさらに帰るのが遅くなり筋トレの時間が減る。そっちの方が面倒だ。そうして俺は流されるままリレーメンバーになったのだった。坂口許すまじ。悪いのは間違いなく担任だが。




「太郎君。すまなかったな」


無事?種目決めも終わり心を切り替えてジムに行こうとしていたところ、坂口に声をかけられた。


「まぁ良いよ。別に出たい訳じゃないが走るだけだしな」

「そうか良かったよ」

「でも何で俺なんだよ」

「それはまぁ1番勝てる確率が高いと思ったからだな」

「それは買い被り過ぎだ。俺はそこまで走るのは自信ないぞ?」


実際筋トレに比べれば全然だ。遅くはないと思うが。


「いや、筋トレに比べればの話だろう?太郎君の筋トレは異次元だからね。それと比べたら駄目だよ」

「まぁできる限り頑張るよ。じゃあ俺この後ジム行くから」

「頑張ってね」


そう言って坂口と別れる。今日は桜井さんとの合トレの日だ。なので桜井さんのところへ向かう。


「桜井さん。行こうか」

「はい。今日も楽しみです!」


2人仲良く教室を出て行く。その後ろ姿を羨ましそうに見つめるクラスメイト達。そしてどこか慈愛のこもった微笑ましそうな目で見つめる坂口。このクラスではもはや毎度の光景である。




「太郎君。リレーメンバーになりましたけど大丈夫ですか?」


ジムへの道中、話題は先程の種目決めについてだった。


「まぁあの状況じゃ断れないしな」

「そうですよね。全く坂口君もひどいです!」

「他薦で良いって言ったのは担任だしな。俺の意見を聞かずに決めたのも担任だ。だから坂口は悪くないと思うぞ?」

「確かにそうですね…。ごめんなさい」


少し落ち込んでしまう桜井さん。俺を思って言ってくれたことだ。凄い申し訳なくなってくる。美少女が落ち込む姿は心が痛む。早く次の話題を出そう。


「いや、別に良いけど。それより桜井さんもリレーメンバーだろ?」


リレーは男女混合だ。桜井さんもメンバーに入っている。


「はい!太郎君と一緒です。頑張りましょうね!」

「そうだな。勝負事だしな。負けるよりは勝つ方が良いに決まってる」

「はい!」


勢い良く返事する桜井さん。


今までは体育祭なんて適当に参加して適当に終わっていた。しかし今年はなぜかリレーメンバーに選ばれてしまい、仲良いクラスメイトも増えた。今年の体育祭は今までとは確実に違ったものになるだろう。できることなら勝ちたいものだ。そのためにも今日は地獄の足トレだ!

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