第12話まさかの再会(昨日振り)

日曜日の朝、水着、着替えなどを持って部屋を出る。今日は海の日だ。筋トレはオフにしているのでクールダウン+有酸素運動の予定だ。


「暑いな。まぁ海に行くにはちょうど良いか」


今日の最高気温は35度を超えるようだ。日差しも強く海にはちょうど良いが、日焼けには気を付ける必要があるだろう。

今日の待ち合わせ場所は県内では有名な海水浴場の最寄駅。家からは大体30分程度だ。




駅まで歩き、電車に揺られ30分。待ち合わせ場所の改札前に着いた。そこには桜井さんと昨日も会った岩崎さんがいた。え、岩崎さん?なぜ?


「あ、佐々木君。おはようございます。今日はよろしくお願いします!」

「お、おはよう」


近づくとあちらも気付いてくれて桜井さんに挨拶された。しかし俺はそんなことよりも桜井さんの隣にいる岩崎さんが気になってしょうがない。岩崎さんもこちらを驚いたように見つめている。


「あ、こちら岩崎詩乃さんです。私のご近所さんで小さい頃から付き合いがあるんです。いわゆる幼馴染なんです」

「そ、そうか」

「昨日振りね。太郎君」

「はい。昨日振りです」

「あれ?お知り合いなんですか?」


桜井さんが不思議そうな顔をする。いや、俺も不思議だ。こんな偶然があるなんて。


「こんなところで会うなんて奇遇ね。珍しく凛が乙女の顔してるから気になって来てみたけどまさか太郎君だったなんてね」

「そうですね。俺もびっくりです」


乙女の顔云々はとりあえずスルー。


「それはそうと太郎君。私のLI○EのID登録してくれたかしら?」

「えっと、そのですね…」


もう会うことはないと放置していたのにどうやらそう上手くはいかないらしい。


「何か言うことは?」

「ごめんなさい」

「まぁ良いわ。じゃあ今ここで交換しましょ」

「はい…」


結局その場で岩崎さんとLI○Eを交換することとなった。もう逃げられないだろう。


「そのえっと佐々木君と詩乃さんは結局どういうお知り合いなんですか?」


LI○Eを交換する間、つい放置する形となってしまった桜井さんから当然の疑問が投げかけられる。


「昨日ショッピングモールでナンパされたのよ」

「な、ナンパですか?」

「嘘つかないでください!桜井さんも赤くならないで!嘘だから!」


ブーブーブー、ブーブーブー


「誰だろ?」


2人と話していると携帯に電話がかかってきた。


「とりあえず出てみたらどうかしら?」

「そうですね」


岩崎さんに言われた通り電話に出る。


「もしもし」

『太郎。いきなりすまん。かけるだけど」

「おう。かけるか。どうした?もう集合時間過ぎてるぞ?」

『それが熱出ちまって今日パスするわ。すまん』

「大丈夫か?とりあえず分かった。2人には伝えとく」

『頼むわ。ありがとう。それにしても悔しいぜ。今すぐにでも行きたいけど妹がなぁ』


かけるには妹がいてそれはもうお兄ちゃん大好きっ子だ。熱が出たまま外出なんてしようものなら家族会議一直線だろう。


「まぁ安静にしとけよ。お大事に」


そう言って電話を切る。どうやらかけるは来れないらしい。って待てよ。つまりはあの2人と俺の3人で海ってことか?これは悪目立ちするのは避けられないかもしれない。

そんなことを思いながらも太郎の顔は少しだらしなく歪んでるでいるのであった。


なんだかんだ言っても太郎も思春期の男なのである。


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