第2話「私、筋肉フェチなんです!」

その日は雨だった。雨でも俺のやることは変わらない。朝起きて、プロテイン、有酸素、朝ごはん。いつも通りのルーティーンだ。そんなルーティーンが崩れたのは帰りのホームルームのことだった。




「じゃあ佐々木。頼むぞ」

「はい」


帰りのホームルーム。今日の肩トレを楽しみにしていた俺は出鼻をくじかれてしまった。今日は図書委員の当番の日だった。まぁしょうがない。多少ジムに行くのは遅くなるがそれだけだ。


「今日のホームルームはこれまで。みんな気をつけて帰れよ」


担任がそう言いみんな各々の行動に移っていく。


「じゃあな太郎。図書委員頑張れよ」

「かけるも部活だろ。無理すんなよ」

「おう!」


そう言ってかけるは部活に向かって駆けていく。あいつら名前にぴったり陸上部だ。雨の中大変だ。


「さて、図書室向かうか」




図書室に着いた俺はカウンターに座る。俺の仕事は本を借りにきた生徒の手続きだ。1時間程は拘束されるため、俺も持ってきた本を読む。筋肉丸わかり大辞典。素晴らしい本だ。




1時間後、仕事を終えた俺は荷物を取りに教室に向かう。図書室から教室はそんな離れていないため2、3分も歩けば着く。

教室の扉を開けると誰かが俺の席に座って本というか雑誌を読んでいた。


「えっと、何してんの?俺の席で」

「え?あ、えっと、ごめんなさい!」


そう言って凄いスピードで頭を下げられる。


「えっと桜井さん?どうして俺の席に?ていうか何で俺の月刊ボディビル読んでんの?」


頭を下げてきたのは学園のアイドル桜井凛だった。しかもなぜか机の中に入れていた俺の愛読書の1つ、月刊ボディビルを読んでいる。


「その、えっとこれ佐々木君が休憩時間読んでるの見てたら気になって…」


オロオロしながらも懸命に答えてくれる桜井さん。その姿は確かに可愛いし庇護欲をそそる。さすがは学園のアイドル。


「それなら言ってくれたら全然借したのに」

「ほんとですか!?じゃあ借りてもいいですか?」


そう言いずいっと距離を縮めてくる桜井さん。急に目が輝き始めた。


「あ、えっとごめんなさい。興奮してしまって…」


赤くなりもう一度距離を取る桜井さん。可愛い。


「えっと借すのは全然良いけどその本興味あるの?」


何たって彼女が借りようとしているのは月刊ボディビル。むさ苦しい裸の男が表紙のゴリゴリのボディビル雑誌だ。


「あります!凄くあります!私、実は筋肉フェチなんです!」


そんな彼女の潔い宣言を聞いたのが高校2年生の夏のことであった。

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