第23話詩乃の気持ち(後半詩乃視点)

夏休み1日目。俺は海の時に水着を買いに行った、ショッピングモールの中にあるカフェに来ていた。無論1人ではなく岩崎さんと一緒だ。相変わらずスタイルの良い人だ。


「で、太郎君。凛のことなんどけど」

「桜井さんのこと?」

「そうよ!一体なにがあったのよ。少し前から太郎君の話をする時のあの子の態度がまるで違うわ!」


桜井さんはどうやら告白したことを岩崎さんには言っていないらしい。いくら幼馴染とはいえ言いにくいのだろう。それで今日俺は岩崎さんに呼び出されたって訳か。昨晩LI○Nで呼び出された理由がやっと理解できた。


「まぁそれは色々ありまして…」

「その色々を聞いているのよ」

「それは俺の口からは言えないことと言いますか…」

「まぁいいわ。大体分かるもの。大方凛があなたに告白したとかでしょう?」

「え!何で分かったんですか!」

「そりゃ分かるわよ。今まで男の子と関わりのなかったあの子が急に男の子の話をするようになった時点で憎からず思っているのは明白。さらにその関係性が変わったとすれば告白くらいしかないじゃない」

「そ、そうですか」


まさにその通りである。さすが幼馴染は伊達じゃない。俺よりも遥かに長い付き合いがあるのだ。自然と気づくのも無理はないか。


「それであなたはどうしたの?」

「どうしたとは?」

「告白の返答に決まってるじゃない。あの子の態度を見る限り振った訳ではないんでしょう?でも付き合ってるって感じでもないし気になっていたの」


そこまで分かっているのか…。確かに俺と桜井さんの今の関係ってどういうもの何だろうか。間違いなく付き合ってはいない。桜井さんも返事はいらないと言っていた。それだけだ。


「えっと、桜井さんが返事はいらないって言ってたんでそのまま話は終わった感じですね」

「はぁ?凛がそんなこと言ったの?」

「そ、そうですね」


急に呆れたような顔になる岩崎さん。


「まぁ良いわ。これはあの子にも発破をかける必要がありそうね。よし、大体状況は分かったわ。でも私は早く決着を付けたい主義なの」

「決着?いったい何の決着ですか?」

「そりゃあ太郎君を取り巻く恋愛関係の決着よ」

「俺を取り巻く恋愛関係って…。そんな大袈裟な」

「そんなこと言ってられるのは今のうちよ。覚悟しときなさい。とりあえず今から私とデートね」

「デート!?何で急にそんなことに」

「つべこべ言わずに着いてきなさい。あたしがリードしてあげるから」

「は、はぁ。まぁ分かりましたけど…」


こうして岩崎さんとデートすることとなった。何か最近流されることが多い気がする。まぁ別に嫌ではないから良いのだが。





〜side岩崎詩乃〜


可愛い幼馴染の好きな相手だ。見定めてやろう。そんな気持ちでついて行った海。そこにいたのは驚くべきことに昨日ジムで一緒にトレーニングした高校生だった。


一応言っておくが、誰彼構わずジムに連れて行った訳でない。私は容姿が優れていると自負している。下手に勘違いを招くような事は普段は絶対にしない。ではなぜそんなことをしたのか。そう。運命を感じたのだ。元々私はモデルをやっている事もあり自然とスタイルの良い男の人を好きになるんだなぁと思っていた。どちらかと言うと太郎君とは逆の人種だろう。


しかし蓋を開けてみるとモデルの男なんてろくな奴がいなかった。その結果その逆、むしろ少し恰幅が良い人の方が気になり始めた。さらに幼馴染の凛からの執拗な筋肉トークによって私の性癖も自然とそっち側に寄って行ったのだ。


そこで偶然により関わりを持った男の子。その姿がまさに私の理想だった。今思えば凛の影響を大きく受けていたのだから同じ人が気になるのも無理はない。そしてジムに誘った訳だ。


それからは海に行ったり一緒にトレーニングをしたりして、段々と本気で気になり始めていた。だから凛の態度が変わった時は人生初めての失恋を覚悟した。やはり初恋って実らないんだなぁと思いつつも応援するつもりだった。だが実際はまだ付き合っている訳ではないらしい。


それならまだ私にもチャンスがある。私は中途半端が嫌いだ。だからしっかりと凛にも本気になってもらい私も本気でやる。それが1番だ。


「凛。そんなもたもたしてると私が取っちゃうわよ?」




だがこの時の詩乃は理解していなかった。この世に筋肉フェチの女性はまだまだいるのだということを。

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