第19話学園のアイドル(男)

「テスト始め」


テスト監督の教師の号令によって皆一斉に問題を解き始める。テストは今日から2日間かけて行なわれる。高校生になり科目数も多いため、残念ながら中学の時のように午前中に帰れるなんてことはない。




「佐々木。どうだった?」


一眼目のテストである数学IIが終わった途端、前の席の坂口翔吾からどうだったか聞かれた。テストに伴い出席番号順に席を並び替えているため今の俺の前の席は坂口だ。かけるではない。坂口は簡単に言えば男番、桜井さんだ。イケメンで運動もできるし勉強もできる。人当たりも良い。まさに男番学園のアイドルと言えるだろう。俺も良いやつだと思ってる。


「まぁ普通かな。平均点は取れているだろ」


実際は桜井さんとの勉強会と甲斐もあって、いつもよりはできているだろう。しかしわざわざそれを言う必要はない。


「そうか。そういえばえっと、その…」

「どうした?」

「佐々木は最近、桜井さんと仲良いよな?」

「桜井さんと?まぁそうだな。ちょっと色々事情があってな」


何で坂口がそんなこと気にするのだろう。だが事情は言えない。少なくても俺の口からは。桜井さんのプライバシーに関わる問題だしな。


「そうか…。なぁ佐々木。放課後ちょっと時間もらえるか?5分位で良い」

「なんだよ急に。まぁ別に構わないぞ。すぐ終わるなら」


5分位なら構わないだろう。それに坂口に限って何か企んでるなんてことはないだろうし。


「悪い、助かる。じゃあ放課後、屋上で待ってるから。誰にも聞かれたくない話なんだ」

「分かった」


誰にも聞かれたくない話?少し気になってきた。だがそれなら屋上はうってつけの場所だろう。こんな暑い時期にわざわざ直射日光全開の屋上に行くやつなんてそうそういないはずだ。




そこからは特に何事もなくテストをこなしていき、昼休みとなった。昼休みはかけるが寄ってきたため、いつも通り一緒にご飯を食べる。


「なぁ太郎。テストどうだった?お前桜井さんと勉強会してたんだろ。成果は出たのか?」

「何で知ってるんだよ」

「何言ってんだよ。もう学園中の噂だぞ。あの桜井さんに昼休み図書室で勉強を教えてもらってる奴がいるって」


桜井さんの影響力を侮っていた。噂になるのが嫌で人の少ない図書館で行っていたが、残念ながら無駄な努力だったようだ。


「全く羨ましい限りだぜ。でも太郎が桜井さんとねぇ…」

「いや、別に何かある訳じゃないぞ。ちょっと事情があって一緒にいるだけだ」

「その事情ってのが気になるんだよ。やっぱり話せないのか?」

「悪いけど無理だ」


確かに今まで全く関わりのなかった桜井さんと急に仲良くなったのだ。気になるのも無理はない。


「まぁいいや。それより次のテスト、英語だろ?。ちょっと教えてくれよ。赤点は一個でも減らしたい」

「良いぞ。英語だけは得意だしな」


自慢ではないが英語だけは得意だ。海外のボディビルの動画やトレーニング動画を見るために勉強したのだ。やはり今でも筋肉の聖地はアメリカなのだ。




それから午後のテストも無事に終わり放課後を迎えた。さて、坂口の用事とは一体何なのか。


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