第21話告白part2
告白をし終えた坂口は俺の出番は終わりだとばかりに屋上を出て行った。今は桜井さんと俺の2人だ。どこか気まずい空気が流れている。
「その、えっと…。何か変なところ見せてしまってごめんなさい」
「いや。大丈夫だ。それに元々坂口が仕組んだことだしたな」
「そうなんですね」
「「…」」
無言の時間が訪れる。本当は聞きたいことがある。あるがそれを聞くのは怖い気もする。だが黙っていても仕方ない。意を決して聞くことにする。
「桜井さん」
「はい」
「その、坂口に言っていたそういう関係になりたい人っていうのは、好きな人がいるってことだよな?」
「そ、そうです」
やはりそうだったか…。だがそれなら仕方ないだろう。
「それじゃあ1つ提案があるんだけど」
「提案?はい。何でしょうか?」
急に俺が提案なんて言ったせいで少し不思議そうにしている桜井さん。これを言うのは俺にとっても寂しいような、悲しいようなそんな感情が湧いてくる。だが桜井さんのためにもそうするのが1番だろう。
「今、俺たちは合トレで週に何回も放課後会ってるよな」
「そうですね」
「桜井さんに好きな人がいれば、頻繁に他の男と会ってることは不利に働くんじゃないか?」
実際その通りになっている事例がある。俺の周りの人間でも2人。かけると坂口が俺と桜井さんは付き合っていると勘違いしていた。よっぽどのことがない限り、付き合ってる人間は恋愛対象に入らないだほう。
「た、確かにそうですね」
「だからもう合トレするのやめにしないか?」
ついに俺は決定的な一言を発した。
「え!?それは困ります!」
「どうしてだ?他に好きな人がいるならそうした方が良いだろ」
「それはその、えっと…」
戸惑う桜井さん。なぜかその頬は赤く染まっている。だが次の瞬間彼女は覚悟を決めた顔になった。
「分かりました。もうまどろっこしいのは辞めにします」
「お、おう」
急に空気の変わった桜井さんに少し戸惑う。
「1回しか言いませんからしっかりと聞いておいてくださいね」
「分かった」
「私が佐々木君との筋トレを続けたい理由は単純なことです」
「何だ?」
「私の好きな人は佐々木君だからです!」
「え?」
「1回しか言わないって言いましたよね!返事はいりませんから!それじゃ!」
そう言って凄いスピードで屋上を出て行く桜井さん。
いや、待ってくれ。俺今告白されたのか?あの桜井さんに?
「ははは。なるほど。それなら確かに合トレを辞める必要は全くないな…」
つい体から力が抜けてその場に座り込んでしまう俺。思い出されるのは覚悟を決めた桜井さんの顔。普段はどちらかと言うと穏やかな雰囲気の彼女があんな顔をするなんて…。
俺は合トレをまだ続けられるという安心と、まさか桜井さんが好いてくれていたという戸惑いと嬉しさ。そして、またこれから何かが起こりそうな高揚感と期待感に包まれていた。今までは筋トレをするために人生を生きていた。しかし今では色んな楽しみがある。1人で筋トレしてるだけでは絶対に得られなかったことだろう。彼女には感謝しかない。
ありがとう桜井さん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます