第22話理由なんてなんでも良い
桜井さんからの告白から1週間。テスト返却も終了し、いよいよ夏休みは明日からという時期になっていた。あれからは特に何事もなく桜井さんとは合トレも行っていた。表面上は特に変わらない関係を続けていたが一部、変わった部分もある。
「太郎君。明日から夏休みですよね。夏休みのトレーニングはどうしますか?」
その1つがこれだ。桜井さんはいつの間にか俺のことを下の名前で呼ぶようになっていた。初めて教室で呼ばれた時は他のクラスメイト含めてびっくりしたし、色々すったもんだあったがそれはまた何かの機会に話せればと思う。
「頻度は今のままで大丈夫か?時間は早めてもいいかもな」
「大丈夫です!むしろ減らされたら太郎君に会える日が減っちゃうので困ります。学校では会えないし…」
「そ、そうだな。分かった」
もう1つはこれだ。桜井さんが好意を隠さなくなっていた。もちろん嬉しい気持ちもあるが、正直恥ずかしい。そのような態度で俺と接する訳だから、それはもう下の名前で呼ばれた時とは比にならない騒ぎになった。男子からの嫉妬の視線。女子にも人気のある桜井さんだ。女子からの視線もなかなか痛いものがあった。だがそれらも今になっては大分落ち着いてきた。
「じゃあ時間についてはまたLI○Eで調整しましょう!今日は詩乃さんと予定があるのでこれで!」
そう言って教室を出て行く桜井さん。普通のクラスメイトならこれでもう1ヶ月程度合わないって形になってしまうが、俺と桜井さんにとってはそうではない。他のクラスメイトからしてみれば垂涎ものだろう。ちょっと優越感を感じてしまったのはここだけの話。
「太郎。もう見慣れたもんだけど1ヶ月前までは考えられない光景だな…」
桜井さんが去り、話しかける機会をうかがっていたのか、かけるが声をかけてきた。
「まぁ確かにな」
「でも本当羨ましいよな。俺も筋トレしてればなぁ」
かけるは俺が桜井さんとジムに行っていることを知っているのでそう思うのも無理はない。確かに俺が筋トレしてなければ筋肉フェチの桜井さんのお眼鏡にかなうこともなかったし、間違いではないのだが。それはそれとしてどんな理由でもかけるが筋トレをやる気になってくれたのは嬉しい。
「お、やっとかけるも筋トレする気になったか?」
「確かにモテるならやりたいな」
「筋トレやってモテるかは知らんがやらないよりはいいんじゃないか?」
「まぁそれはそうだよな」
かけるもこれを機に筋トレに目覚めてくれれば嬉しいことこの上ない。別に筋トレを始める動機なんてどうでも良いのだ。俺もそんな大それた理由で筋トレを始めた訳じゃないし。
もし今、筋トレを始めようか迷っている人がいれば聞いて欲しい。筋トレは自重でも筋トレだし、もちろん重りを使ったウエイトトレーニングも筋トレだ。筋トレの始めやすさは世界に数多ある趣味の中でもトップクラスだろう。目的は何でも良い。モテたい。痩せたい。健康になりたい。誰かを見返したい。喧嘩に勝ちたい。部活でレギュラーになりたい。迷う時間がもったいない。迷うくらいなら始めよう。まずは腕立て伏せ、腹筋、背筋それで十分。それだけでもう君は立派なトレーニーだ。
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