第33話放課後筋トレ会

始業式が終わり放課後。俺達は学校の体育館の中にあるジムに来ていた。来たことは無かったが案外設備は充実している。


「それでかける。俺は何すればいいんだ?」

「まずは何からすれば良いか教えてくれよ。今日来た奴らは皆初心者だし」

「分かった」

「佐々木君は筋トレしてもう長いの?」


一緒にジムに来ていた内の1人。理事長の息子である加藤が声をかけてきた。漫画でよくあるような親の権力で何かやらかすみたいなこともなく物腰の柔らかいやつだ。


「そうだな。中学1年の時からだからもう5年になるな」

「5年!それはすげーな!」


大袈裟に驚いたのは佐藤。金髪で短髪。見た目はヤンキーだが悪いやつではない。


「ふむ。それであの桜井さんも虜にしたって訳か…」


そして最後に何か考え込んでいるのが坂口。俺の目の前で桜井さんに告白して振られた。桜井さんが俺のことを好きなのを察しているようだが別に俺に対する態度を変えていない。まぁ要するに良いやつだ。


「一応聞いておくが、みんなほぼこうした本格的なウエイトトレーニングの経験は無いって事で大丈夫か?」

「「うん」」


一様に頷く4人。


「じゃあとりあえずベンチプレスするか」


初心者ならまずはウェイトトレーニングの楽しさを知ってもらいたい。それにはやはりベンチプレスが良いだろう。何たって高重量を扱えるし見た目も派手だ。それに有名でもある。入口としては優秀な種目だと思う。


「ベンチプレスやったことある人いるか?」

「夏休みに見様見真似でやったけど何か良く分からなかったな」


かけるだけが一応やった事あるらしい。確かにやる事自体は簡単だがいざしっかりと筋肉に効かそうとすると難しい種目ではある。


「とりあえずやってみるから見といてくれ」


そう言ってやって見せる。それから1人ずつ体験してもらった。




「それじゃあMAX測定するか」

「「MAX測定?」」


一通りベンチプレスを体験したかける達は首を傾げている。


「簡単に言えば何kgまで挙がるかってことだ」

「おお!楽しそう!」


佐藤はやる気満々だ。他の皆も嫌そうにはしていない。まぁ一種の勝負事だ。楽しくない男は中々いないだろう。実際MAX測定をモチベーションにしているトレーニーは多くいる。単純に重い物を持ち挙げれるのは男の浪漫だしな。


「じゃあまずは俺から行くぜ!」


とりあえず最初40kgにセットしたバーベルを持ち挙げる。まだまだ軽そうだ。


「じゃあ次僕いきます」


次は加藤。線も細いし挙がるだろうかと思ったがギリギリで挙げた。まぁこの重さがほぼMAXだろう。


「次は俺だな」


次はかける。割と軽そうに挙げた。まぁまだいけそうだ。


「最後は俺だ」


そして最後は坂口。今までで1番軽そうに挙げた。流石学園のアイドルは伊達じゃない。


「じゃあ次は60kgだな。加藤は無理だろうから他の皆は挑戦してみよう」




3人挑戦してみた結果挙げれたのは坂口だけだった。その坂口も70kgは挙がらなかった。だが初心者で60kgは十分凄いだろう。


「ふぅ。やはり70kgは厳しいね」

「まぁ60kgは十分凄いぞ」

「そうなのか。ありがとう。ちなみに太郎君はどれくらい挙がるんだい?」

「そうだな。多分150kg位じゃないか?」

「「150kg!?」」

「太郎。流石にそれは嘘だろう」

「かける。お前は俺がどれだけ筋トレしてるか知ってるだろ?」

「まぁ知ってるけどよ。じゃあちょっとやってみてくれよ」

「良いぞ」


そう言われ150kgをセットする。久しぶりに挙げるがまぁ挙がらない重さじゃない。そのまままだ余力がある形で挙げた。


ガシャン!


流石に150kgにもなってくるとバーベルを置く時の音も大きい。少し良い気分になり、どうだとばかりにかける達の方を見る。


「「ば、化け物だ…」」


はい。全員に引かれました。なぜだ。でもこれがモチベーションに繋がってくれれば本望だ。頑張れば俺たちもこんな重さ挙げられるようになるんだって。初心者の内はどんどん伸びるしな。その快感に溺れ筋トレ沼にぜひはまって欲しいものだ。


そんなこんなで充実した放課後筋トレ会は進んで行くのだった。

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