第4話ミリタリープレス

三角筋談義を終えた俺は種目に入る前に桜井さんに今日やる種目を説明する。


「じゃあまずはミリタリープレスやってみようか」

「ミリタリープレス?聞いたことないです」

「まぁサイドレイズとかに比べるとね」

「そうですよね。サイドレイズとかなら知ってます。you○ube見ながらやったこともあります!ペットボトルで」

「そう。まさにそのペットボトルっていう部分が重要」

「え?どういうことですか?」

「ペットボトルって重くて片方2kgくらいだろ?」

「そうですね」

「でもサイドレイズなら女性なら2kgでもある程度は効くはずだ」

「確かに20回くらいやるとしんどかったです」

「つまり何を言いたいかというと、サイドレイズは基本的に重さを扱えないんだ。反動なしでやると男性でも10kg扱えれば十分って言うくらいだな」

「えっとそれって何か問題なんですか?」

「問題っていうか効率が悪い。筋肉っていうのは基本的に重い物を持つと刺激が入るんだ。でもずっと同じことやると慣れちゃうから軽いのでパンプさせたりもする。つまりは重さを扱う種目と軽いのでやる種目どっちもやるのが一番効率的なんだ」

「なるほど。それでこのミリタリープレスは重いのを扱えるってことですね」

「そう。肩トレで重いものを扱えるのはミリタリープレスやアップライトローとかだな。でもアップライトローはちょっと難しいから今回はミリタリープレスをやるってわけだ」

「分かりました!」

「じゃあちょっと準備するから待ってて」


そう言って俺はミリタリープレスの準備を始める。ミリタリープレスとは要はバーベルフロントプレスだ。動作は簡単。バーベルを胸の位置から上に挙げるだけ。ウェイトリフティングの選手がよくやってるバーを上に挙げる動作の最後の部分だけやるような感じだ。なので準備も簡単。バーを胸の位置くらいにセットすればそこから挙げるだけだ。初めてなら20kgで十分だろう。


「じゃあ最初俺がやるからちょっと見てて」

「はい。分かりました!」


そう言って俺はバーを持ち上げ頭の上に挙げる。ポイントは腰をそらないことと、フィニッシュの際に少し肩を後ろに持っていくことだ。要は頭が少し前に出る感じだ。腰をそると腰を痛めるので注意。

5回程行ってバーを置く。


「じゃあやってみようか」

「はい!」


元気よく返事した彼女は勢いよくバーを持ち上げ頭の上に持っていく。様になっている。そう、ミリタリープレスは動作が簡単なので初めてでもある程度様になるのだ。


「じゃあ10回いこうか」

「はい!」


返事した彼女だが8回を終わったころプルプルし、挙がらなくなる。


「さ、佐々木君。もう無理!」

「補助するからあと2回いこう!」

「え!補助ですか!?」


彼女の後ろに抱きつくような形で補助してあと2回挙げる。柔らかい。何とか動作を終えた彼女は少し汗ばんでいる。


「えっと、補助ありがとうございます…」

「あ、うん。べ、別に良いよ」


今、思ったんだが女の子、しかも美少女に後ろから密着するって相当やばくないだろうか。つい、いつも他のトレーニング仲間とやる時と同じような感じでやってしまった。心なしか良い匂いしたし。セクハラで訴えられたらどうしよう。


「よし!じゃあ俺もやるから交互に3セットやろう!」

「は、はい!」


場の雰囲気を変えるように言い、トレーニングを再開する。その日のトレーニングはいつもの1.5倍くらい時間がかかったがまぁしょうがない。これがずっと続くならあれかもしれないが今日だけなら新たなトレーニーの誕生を喜ぶだけだ。それにトレーニングの時間が伸びるならまだ許容範囲だ。もっと別のこと。それこそ、放課後にカフェとかに時間を使うのはちょっと厳しいが。それにちょっと役得もあったし。


しかし残念ながらこの日だけでは終わらないのであった。トレーニングの時間が伸びるのなら許容範囲?残念ながら彼女はそんなに甘くないのです。


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