服部朔(はっとり・はじめ)、高校生を主軸に据えた、探偵事務所の樹神(こだま)先生、そして、なんて素敵な百花(もか)さんの深く掘り下げられた者達が立ち回り、暴れる悪戯な霊魂を鎮めようとする物語です。
中でも服部少年の成長は見事に描かれております。
それは最後に背伸びした位かなとも思えましたが、劇的に変わると言うのは、憑依でもされない位無理なことなので、難しいと思います。
先ずは、表題のカラーですが、キャラクターのカラーが出ていると言う意味のカラー、そして、作中に現世から幽世に行く際の真っ赤な世界に名前に茜が入っていたりなど、カラーを意識して構成されており、まるで、曼荼羅のようなイメージを抱く程に、美しく尊厳さえも感じました。
そして、マチエールは、服部少年は、弓と矢の素材のような凛とした感じ、先生は糊の上に砂を撒いたざらっとした感じ、百花さんは、香が焚きしめられた古い着物に可憐なブラウスとで、抱かれたら胸元で息もできない綿の感じがいたします。
所で、様々な事件を無事解決して来る大筋が面白いのですが、飯テロも忘れてはなりません。
じゃあ、服部少年、あそこへ行こうと、名古屋の美味しい所を巡ることで、グルメツアーができました。
ごちそうさまです。
おかわり。
食べ物や土地名など、名称を少しもじってあるのもユニークでした。
大分脱線いたしましたが、本作は、子ども達が口ずさむ歌を題材にしております。
詳しく知らなかったり、忘れてしまっていたりするのを思い起こせました。
そして、今日からは、怖いと思うようになると同時に、助けを呼ぶなら、あちらですねともう決めてあります。
さて、あちらとは何方でしょうか。
三人の能力は、皆別々です。
一人欠いても上手く行かないときもあります。
共感応をエンパスと呼び、これが服部少年の当たりスキルです。
服部少年は、過去に失くしていた哀しい想い出を持っております。
それを乗り越えられるかは、最終的には自分自身です。
がんばって、偉かったと思います。
スケールの大きくもありますが、情などは繊細に丁寧に書かれており、作者様のいい筆致で描けております。
少しだけ怖いですが、恐れることはありません。
力強い、彼らがいるのですから。
作品世界にダイブしてみては如何でしょうか。
洗練された東京とも、コテコテの大阪とも違う、独自の文化を育んできた名古屋。
そんな日本のミステリーゾーン名古屋を舞台に、ちょっと(どころじゃない)感受性の強い青年「服部 朔」が、怪奇事件専門の探偵「樹神 皓志郎」と共に、現実と非現実のあわいに存在する怪異に立ち向かう!
ホームズ×ワトソン型のバディもので、超強力な助っ人美女も登場!名古屋メシもてんこ盛り!みんな大好きなやつだがや!
そして、連作短編の形で進む物語に横串を通すのは、主人公服部少年のとある思い出。果たして次々と起こる一連の怪異の裏側にある事件の真相、そして服部少年との関係とは……?
さてさて、この主人公の服部少年なんですが、感受性が強すぎるあまりに、本来知覚できないものを知覚しちゃうという特殊な体質を持ってるんですね。
それがまぁ、普通の人と距離ができる原因になっていて、孤独を感じて生きてきているんですけど、そんな服部少年が、理解ある大人たちと出会い、自身を苛む特殊な力「共感応」を使って難事件を解決することで、自分自身や過去とも向き合い成長していきます。
共感応とまでは言いませんが、人と違うってだけで疎んじられる人ってやっぱり現実にも結構います。普通とは違うから周りはそれを理解してくれなくて、自身も理解されることを諦めて、多感な思春期を鬱屈して過ごした人も少なくないはず。特に創作界隈には(←個人的なイメージ)。
ナンバーワンじゃなくてオンリーワンとは言うけれど、オンリーワンだからって幸せとは限らない。個性という単純な言葉で片付けられるほど人間は単純じゃない。そんなパーソナリティと、人は、自分はどう向き合えばいいのだろう。
服部少年の背中を追っていると、そんな気にならずにはいられませんでしたねぇ。
舞台は名古屋、樹神(こだま)探偵事務所。
探偵・樹神先生の助手として働く男子高校生・服部(はっとり)くんの視点で物語は進んでいきます。
探偵事務所に舞い込んでくるのは、この世ならざるものが関わる不思議な依頼、怪異事件ばかり。
それぞれ異能の力を持つ樹神先生と服部くん、そして和装美人の百花(もか)さんも加わりながら、事件を解決に導いていくのです。
章ごとに異なる怪異事件を追う構成。が、どうやらそれぞれの事件には繋がりがあるようで――?
体質が原因で心に闇を抱えた服部くんは高校生。つまり思春期真っ只中。彼は下を向きたくなったり、逃げたくなったりしながらも、少しずつ成長していきます。
その過程は丁寧に描写されていて、ときには共感し、ときには見守るような気持ちで読み進めていくことができました。
実際に服部くんのそばで彼を見守る二人の大人、樹神先生と百花さんもとても魅力的です。
思わず吹き出してしまうような楽しいやりとりをするいっぽうで、彼らなりの悩みもあり、それがとてもリアルに感じられました。
また全体的に、怪異の存在を示すような仄暗い雰囲気と、名古屋の独特な温かみを含む地方訛りが絶妙にマッチしていて、素晴らしいです。
各話のキーワードや描写にも深みがあって素敵なのですが、そちらはぜひ本文を読んで震えてください。
怪異事件の解決、名古屋名物による飯テロ、心にぽっかり穴が空いてしまった少年の成長。
どれをとっても楽しめること間違いなし。おすすめです。
実在の街を舞台にしながら、オカルトを扱うという、一瞬ミスマッチに思える取り合わせですが、名古屋をよく知っている私からすると、神社とか昔の遊郭とか病院とか、ちょっといわくつきな場所(施設名は伏せてあるがモチーフとなるものはある模様)を実際に登場させたりして、そこに潜む怪異と対峙します。
誰もが知っている童謡やおまじないをキーワードにして、隠された怖い意味を掘り下げてみたり、幽世の描写はホラーテイストも混じっていたりしますが、爽やかな探偵さん、随時登場する名古屋飯テロも出てきたりして、そこまで怖くはありません。
描写力は相変わらず丁寧で、読む側にストレスを与えない筆致で、しかしながら、これまでの陽澄ワールドとはまた違う新しい素材と完成度の高さに、驚嘆せず入られないでしょう。
名古屋を舞台とした現代ファンタジーはあまり見ないのではないでしょうか?
名古屋に縁がある人はもちろんのこと、ない方にもぜひ読んでいただきたいです!
「開け」
異能を乗せた声が響き、世界が赤く染まる。そこは現世と幽世の狭間。
容喙声音を操る探偵と共感応を持つ少年助手が、哀しき怨霊と対峙する──
” 共感応 ” とは、相手の感情を受信してしまうという能力。
その能力を持て余している服部少年は、探偵樹神の元で力のコントロールを学びつつ、探偵助手をしている。
舞い込むのは怪異絡みの案件ばかり。洒落たスーツをパリッと着こなす樹神先生は、今日も気障ったらしいお辞儀で美しき依頼人をお出迎え。
異能調香師である百花の力も借りつつ、二人は問題解決に乗り出すのだが……
童謡に関連した怪異というのがおもしろ怖い。(童謡って、怖い歌多いですよね)
過去の事件も絡み合い、徐々に謎が深まると共に少年の悩みも深まっていく構成に引き込まれる。不甲斐ない自分に苛立ち蹲っていた彼が、心を開き迷いを捨てて歩み出す姿は号泣必至。壮絶な過去と驚愕の真実を乗り越えた「彼ら」に拍手を送りたくなる。
垂涎の名古屋グルメや、樹神先生のちょっと胡散臭いカッコよさ、癒し系美女な百花さんの和装ファッションにもご注目! 見どころ、笑いどころ、泣きどころ満載の、優しさ溢れる感動作です。
あと、名古屋弁ってなんかいいですね。
エンパス能力の持ち主、服部少年は探偵事務所の助手です。
その能力を活かして怪異事件に立ち向かいます。
このところ名古屋市内では怪異事件が続発中なのです。
服部少年を導く探偵事務所の所長、樹神先生。
和装の美人で調香師の百花さん。
彼らの助けもあって活躍する服部少年。
ところが彼は悩んでいます。
その能力を受け入れられない親。
自分の未熟さ。
まさに悩める青春です。
悩む服部少年の成長ぶりはこの物語の中核です。
また登場する名古屋名物の食べ物の何と美味しそうなこと。
読めば食べたくなること間違いナシ。
名古屋グルメ旅、いつかやってみたくなりました。
怪奇とミステリーが両方味わえる奇異な事件の謎。本当は怖い童謡。
想いが報われぬまま漂い続ける魂の重たさ、業の深さ。
時々読者を襲う強力な飯テロ。
そしてなにより、語り手である高校生の服部少年が様々な事件をとおして自分の生き方を見つめていく成長の物語。
洒落者の樹神先生のかっこよすぎる声や、登場するたびに粋な和装ファッションを楽しませてくれる百花さん。彼らの名古屋弁の会話はスリリングな展開の中で緩和剤のように和ませてくれます。
霊や怪奇現象を題材にとり、共感応という特殊能力を持つが故の主人公の苦しみや悩みが描かれていますが、生きていること、自分の存在に対して人知れず疑問や悩みを抱えている十代の方々にぜひ読んでもらいたいです。きっとこの作品の樹神先生や百花さんのような大人がどこかにいるはず。そして自分を肯定できる場所がどこかに見つかるはず。
事件を解決しながら、心に巣食った暗闇にも光が差すような心地になります。
怪奇譚とヒューマンドラマが織りなす、読みどころ満載の素晴らしい一作です。
私が万人にお薦めできる陽澄すずめ様の最新作は、名古屋の街中にあるちょっと風変わりな探偵事務所が舞台。そこに持ち込まれる風変わりな事件を取り扱うのは、風変わりな探偵さんと、その助手の少年。芝居がかった振る舞いが似合う探偵さんに比べたら、少年は至って真面目そのもの。でもそんな探偵事務所に勤めるぐらいだから、少年にもやっぱり風変わりなところがある。それはーー
少年は人や怪異の想いと極めて共感しやすい、特殊体質持ちだったのです。
もうこれだけで興味惹かれるでしょう?
彼らは様々な怪異と対峙するけど、別に切った張ったの闘いでねじ伏せるわけじゃない。怪異の想いを汲み取って、然るべきところに返そうとする。ただその想いはあまりに強すぎたりして、少年は振り回されることもしばしば。時に迷うこともあるけど大丈夫。彼の周りには探偵さんや、煙を扱う和服美人のおねえさんや、頼りになる人がいるのだから。だから少年は様々な想いに触れていくうち、やがて想いにかけるべき言葉を見出だすのです。
そう、このお話は怪異譚でありながら、少年の成長の物語でもあります。特殊体質に悩まされて不安を抱えていた少年が、一歩ずつ成長する姿には、思わず目頭が熱くなること請け合い!
『共感応トワイライト』是非皆さん、ご一読ください!
名古屋のとある雑居ビルにある探偵事務所。とはいえそこにいる探偵さんは、浮気調査も密室殺人の謎解きも、怪盗を捕まえたりもしません。
ここで取り扱うのは、非現実の世界で起きた事件。言ってしまえば、オカルト的な事件です。
当然、常識では考えられないようなおかしなことも多々起こりますが、そこはさすが専門家。こちらもこちらで、普通の人間には決して真似できないようなやり方で怪異に挑みます。
しかし本作の主人公は、そんな専門家である探偵の樹神先生ではなく、その助手である服部少年。
彼もまた普通の人とは違う不思議な力を持っていますが、それ故に何か心に悩みを抱えている模様。大人であり精神的にも能力的にも強い先生と比べると、どうしても見劣りするところがある。だけどそういう弱さが、そして、それでも何とかしたいと頑張るところが、彼の魅力でもあるのです。
一人で全てを解決できるようなスーパーヒーローではないけれど、不器用ながらできることを精一杯やろうとする一途さは、きっと見る人の心を動かすことでしょう。
あと、本作を語る上で忘れてはいけないのが、所々に出てくる名古屋めし。もしも名古屋に遊びに行かれることがあれば、本作を読みながら何を食べるか決めるのもいいかもしれません。
この物語は、他人の想いに翻弄される異能を持った主人公が、自分の中の強さに気付くまでの物語。主人公は名古屋の有名進学校に通いながら、探偵(先生)の助手として働いている。先生には他人に干渉する声の異能があった。そんな探偵事務所に舞い込んでくるのは、ちょっと怪しい事件ばかりだ。
行方不明の予備校生は、かくれんぼの声を聞いた。ある神社では、犬の日に妊婦さんばかりが階段で転ぶ。その前兆には「かごめ、かごめ」の歌が聞こえていた。そして童謡「あめふり」では女子高校生が……。次々に起こる事件を、主人公と先生、そして調香師の女性が、解決していくが、そこには昔の名古屋の遊郭が関わっているようだった。そして明かされたのは、調香師の女性に関する秘密だった。
そして主人公はかつて、守られなかった約束を思い出す。主人公は病院で、少女と指切りげんまんしていたのだが、その記憶を消されていて⁉
この世とあの世の隙間は、今日も開かれ、迷える魂は声に導かれてあるべき場所へ帰っていく。そこに寄り添うのは、強い共鳴をもつ少年と、気高き香りの女性。
名古屋という場所の歴史、その土地ならではの神社など、知らないことが沢山伏線として張り巡らされており、とても読み応えのある作品でした。また、思い返せば誰でも知っている歌やおまじないが、こうして作品に取り込まれているものを初めて拝読し、オリジナリティの高さをうかがえます。また、誰にでもある人間の弱さと強さを同時に扱っており、霊にまで感情移入させるような設定で、最後に希望を見出だせる仕掛けも脱帽ものでした。
是非、御一読下さい!
他人の感情が流れ込んできてしまう共感能力を持つ高校生・服部朔。
彼が助手として出入りしているのは、オカルト関係専門の樹神(こだま)探偵事務所。
自身もまた、異能を持つ樹神先生の元に、今日もまた不思議な依頼が持ち込まれる……。
異能を持つがゆえに家族とうまくいっていない悩める青少年・服部少年の視点を中心に綴られる物語です。
思春期特有の不安定で純粋で、それでも前を向こうとする服部少年の姿に、読んでいて目頭が熱くなることもしばしばです……っ!。・゚・(´^`*)・゚・。
服部少年の両脇を固める樹神先生と、謎めいた美女・百花(もか)さんの存在がまた素敵なのです! 迷える少年を優しく、時に厳しく導いてくれます。
名古屋を舞台にしているので、ご当地グルメも満載な今作。
「食べてみた〜い!」とご当地グルメによだれをたらしつつ(笑)、服部少年の成長を見守ってあげてください!(*´▽`*)
名古屋――。行ったことがない人にとっては、ありふれた都市の一つでしかないでしょう。しかし、そうでない人にとっては、土着の文化があり、方言があり、年季の入った店舗が竝ぶ、どこか郷愁を誘う場所かもしれません。
そんな名古屋の街角で、「もういいかい」「まあだだよ」という子供の遊び声や、かごめ歌、童謡などと共に差し込む茜色。その向こうにあるのは様々な怪異が存在する異色の世界です。怪異は、時として現実世界に浸蝕して事件を起こします。
そんな事件に立ち向かうのは、樹神(こだま)探偵事務所の探偵・樹神皓志郎先生と、その助手である男子高校生・服部朔くんです。とくに朔くんは、闇を抱えた者の感情を受信することのできる特殊体質でもあります。
子供の頃の何となく不安な感情に似た薄気味悪さと、郷愁を誘う雰囲気の中で起こる怪異。樹神先生と朔くんの凹凸コンビと和風美女、そして時たま差し込まれる飯テロの描写も秀逸。思わず名古屋を訪れてみたくなること必至です。
そんな怪異の向こうに現れる、人の闇と、その切なさとは――?
是非、お手に取ってみてください。
名古屋に存在する、樹神探偵事務所。そこに持ち込まれる相談は、ペット探しや浮気調査ではなく、幽霊絡みの怪異。
警察や普通の探偵では解決不可能な怪異の相談ならお任せあれ。それが樹神探偵事務所なのです。
このお話は、登場人物がとても魅力的。
物語の語り部で、探偵事務所でバイトしている服部少年は特殊な力を使い、事件解決に一役買っていますけど、彼はまだ非力な子供。しかし事務所の主である樹神先生や、美しく優しい女性の百花さんなど、頼れる大人たちに支えられながら、成長していきます。
自分ではどうにもできない壁にぶつかった時、力になってくれる人がいるって、良いですね。
不思議な事件を解決するだけでなく、人間関係が丁寧に描かれていて、ヒューマンドラマとしても非常に面白いです。
そして本作を語る上で外せないのが、飯テロ。
ちょいちょい登場する、美味しそうな名古屋グルメ。
読んでいて、名古屋に足を運んでみたくなりました。
ある日の夕暮れ、受験生・都築(つづき)務夢(つとむ)は《声》を聞いた。
ーーもういいかい。
ーーまあだだよ。
模擬試験の結果にむしゃくしゃしていた彼は、ついそれに応えてしまう。
数日後、『樹神(こだま)探偵事務所』に、務夢の姉・翼沙(つばさ)が現れる。失踪した弟を、警察とは別の方向から探して欲しいという依頼だ。
樹神皓志郎(こうしろう)探偵と高校生助手の服部朔(はじめ)少年は、捜査を開始するがーー
◇
現世と幽世と狭間の世界をめぐる、伝奇ミステリーです。
名古屋に土地勘はないのですが、街並みの描写や土地の言葉に親しみがわきます。各章で童謡や土地に関する信仰に触れられるのも、民俗好きとしては楽しい。
《声》の主が抱える悲しみや、それに応じてしまう人間側の葛藤、個性的な登場人物達が魅力的です。
あやかしミステリー好きな方にお勧めです。
『樹神探偵事務所』
密室殺人なんかとは縁がないけれど、この探偵事務所にはちょっと変わった依頼が持ち込まれる。
―――
失礼して本文から引用させていただきましたが、複数あるエピソードの序盤に主人公「服部 朔」くんの案内が。連続ドラマか連作小説か、これぞ探偵ものという雰囲気から始まります。
とは言っても、ちょっと変わった依頼というのが曲者。密室殺人なんかとは縁がないって、そもそも相手にしてないのではとツッコミたい。
探偵「樹神 皓志郎」が手掛けるのは、怪異による事件ばかり。服部少年は日々、その助手として走り回っているのでした。
物語は、いくつかの短編形式のエピソードで紡がれます。舞台となる名古屋の描写が色鮮やかに景色を思わせ、そこに起こる事件の闇との対比が重く心に圧し掛かります。
お話のあちこちへ大胆に、あるいは緻密に、結末へ向かう鍵が隠されています。明らかになっていく真相に向け、関わりそうなキーワードも多く見つかります。
樹神先生の助手気どりで謎解きなんぞしておりますと、意外な展開に驚かされますが。
登場する人物たちに、それぞれの人生を感じずにはいられません。多感で内罰的な服部少年が、人との関わりで変化していくお話でもあります。
しかしその実、服部少年は天然の人たらしなのかもしれません。関わった人々は程度の多寡あれど、彼に関わり続けようとします。
私の推しは、艶やかという言葉のピッタリな「百花」さんですが。
現時点で完結まで今少しのようですが、残りのお話でどう結ばれるやら見当がつきません。ドキドキしつつ、最後の景色を楽しみに待つこととしましょう。
名古屋を舞台に、現実と異世界の狭間で起こる怪異事件を、異能を持つ個性的なキャラクターが解決に導いていきます。
丁寧な情景描写はわかりやすくて、名古屋の風景は勿論のこと、鮮やかな色味を持つ異世界の情景が手に取るように浮かんできます。繊細な心理描写も秀逸で、感情移入を高めます。
主人公の服部少年はセンシティブで、何やらトラウマを持ってるのが窺えます。彼が抱える紙一重な危うさを、探偵の樹神先生や妖艶な美女の百花さんがサポートをして事件を追っていくわけですが、一筋縄ではいかないスリリングな展開が彼らを待ち受けています。どの登場人物も魅力的で、その世界にいつまでも浸りたい気分になりますね。
また、ご当地小説としての側面も色濃く、名古屋のグルメも紹介されていて、知識欲だけでなく食欲まで刺激されます。本当に美味しそうなので、夜中に読まれる方はご注意を。
書店に並んでいてもおかしくない本作を是非、ご覧ください。
樹神探偵事務所に持ち込まれる依頼は、いわゆる浮気調査や素行調査などではありません。霊にまつわる不可思議な事件。視えない者にとっては解決が難しい事件に、樹神先生と助手の朔が挑みます。
能力を使いながら怪異と対峙するシーンは、バトルものが好きな方も大満足していただけるほどハラハラさせられます。
人に対して良くないことをする怪異であっても、もとは現世で普通に暮らしていた人々。在りし日の記憶が紐解かれるとき、涙腺が緩んでしまいます。訳あって成仏できなかった魂を、彼らはどのように導いていくのでしょうか。
伏線回収が絶妙で、ほっこりするバディものをお楽しみください。作中に登場する調度品の美しさ、食べ物の描写も必見です。