怪異事件の謎を解きながら、心に巣食う闇も解き放っていく。

怪奇とミステリーが両方味わえる奇異な事件の謎。本当は怖い童謡。
想いが報われぬまま漂い続ける魂の重たさ、業の深さ。
時々読者を襲う強力な飯テロ。
そしてなにより、語り手である高校生の服部少年が様々な事件をとおして自分の生き方を見つめていく成長の物語。
洒落者の樹神先生のかっこよすぎる声や、登場するたびに粋な和装ファッションを楽しませてくれる百花さん。彼らの名古屋弁の会話はスリリングな展開の中で緩和剤のように和ませてくれます。
霊や怪奇現象を題材にとり、共感応という特殊能力を持つが故の主人公の苦しみや悩みが描かれていますが、生きていること、自分の存在に対して人知れず疑問や悩みを抱えている十代の方々にぜひ読んでもらいたいです。きっとこの作品の樹神先生や百花さんのような大人がどこかにいるはず。そして自分を肯定できる場所がどこかに見つかるはず。
事件を解決しながら、心に巣食った暗闇にも光が差すような心地になります。
怪奇譚とヒューマンドラマが織りなす、読みどころ満載の素晴らしい一作です。

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