第十三章 白い翼

第38話 13-1

 私は傷ついたハークのもとへと駆け寄った。

「ハークさん、しっかりして!」

 彼はうめきながらも、笑顔で私に言った。

「そうか、真帆。お前はあのタイガの子供だったのか」

 私もにっこり笑って答えた。

「はい、そうみたいです」

 だが、ハークにはまだやるべきことがあった。

 そうだ。〝悪魔の蓄音機〟を破壊せねばならない。


「真帆、頼みがある」

 ハークが獣の目に変わった。

「〝悪魔の蓄音機〟を破壊してきてほしい」

「えっ? 私が?」

「そうだ、お前の父、タイガの力を持ってすれば魔王の力など及ばぬわい」

「む、無理ですよ!」

 ハークは鼻で笑う。


「真帆、お前の背中をよく見てみろ」

「え?」

 ふと後ろに首をひねると、背中に真っ白な翼が生えていた。

「これって、私のお父さんの力なんですか?」

「うむ、そうじゃろうな」

「じゃあ私、魔王を倒しにいってきます!」

 そういって、私はにっこりとハークに笑顔を見せた。

「頼むぞ」

「はい!」

 私は翼を大きく広げて飛びたった。



 さすが、お父さんの翼、ものすごいスピード。

 そのせいか、肌寒かった。

 そして、とうとう魔王の城に着くと、螺旋階段をぐるぐる飛びながら昇っていく。。

 最上階につくと私はびっくりして、口を大きくあけた。


「先輩…?」

 そこには真っ黒な鎧を着た先輩がいた。

 そして、先輩は怖い顔をしたまま、全身真っ黒なスーツを着た男の人と睨みあっていた。

 隣りには、大きな紫色の怪物が経っていた。


 その人は鬼のような怖い顔で先輩に叫ぶと、右手をまっすぐ構え、何か術のような言葉を唱える。

 すると手先から紫色の大きなボールが出現した。

 どんどん大きくなっていく。

 私は瞬時に危険を感じた。

 

 あれが先輩に当たったら死んじゃう。


「やめてぇ!」

 咄嗟に先輩の前に割り込んで、仁王立ちした。

 すると、ぼこっと私の胸に大きな穴があく。

 私は口から真っ赤な血を吐きだして、倒れた。


「真帆ぉ!」

 薄れていく意識のなか、先輩が駆け寄る足音が耳に響く。


「なんで、なんで、お前がここにいるんだ!」

 私は気を失いながらも答えた。

「やっと…先輩に出会えた」

 先輩はずっと子供のように泣きじゃくっていた。

 それでも私は嬉しかった。

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