黒歴史小説 トリプルエッジ

味噌村 幸太郎

第一章 真帆

第1話  1-1

 その日、私はおろしたての浴衣を着て、慣れないルージュを友だちに塗ってもらい、花火大会の会場である海峡へと向かった。

 だが、その日、花火は打ち上げられなかった。


 その日、私を待っているひとはいなかった。代わりに、真っ黒で入道雲のみたいな巨人が海峡の前に立っていた。

 とても、とても、こわい顔をしていた。

 でも、なんだか寂しそうな目をしていた。


 そして、花火の代わりに、一筋の大きな光りが空へと昇っていった。

 とても、きれいだった。

 でも、その光りは大勢の人々をまきこんで、空に消えた。私はそれを見るのがとても、くるしかった。


 その日……その日……その日、先輩は来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る