第21話「あの委員長マジっ‼‼」

【星野夜空】


「それで、急で済まないがお前にこの仕事やってほしいんだがいいか?」


 森香との買い出しデートの記憶も新しい翌日の事だった。

 今日は確認と言うことで昼休みに森香と二人で会議室に向かったのだが、その場に行ってしまったのが間違いだった。


 見知った顔である俺の顔を見るや否や、ここぞと笑みを浮かべ近づいてきたかと思えば、先の台詞の始末。


 まったく、俺たちのことも考えてほしい。


「は、え……そんな急に言われても! 先週でプリントの方は終わったって……」


「いや、先生とも確認したけど来賓の方々への説明が少ないんだよ……大体、もっとこう……お年寄りの方でも見れるように大きくしてくれないと……」


「……いや、でも。もうクラスの方もやっていきたいとので……」


「その前に実行委員だろ?」


「そ、そうではありますけど……でも……」


 すると、俺と桜井委員長の掛け合いを後ろで聞いていた森香がバッと前に入った。


 前に立っていたはずの桜井委員長の下半身が彼女の小さな下半身で隠れる。ふわりと舞った長い髪から香るシャンプーのいい匂いに一瞬心を奪われてしまった。


「い、いえ――大丈夫です。実行委員長っ、私たちで終わらせるので――桜井委員長はどうぞ、他の仕事をしてください――」


「え、いや——森香っ⁉」


 いたたたたたたたたたたたたっ‼‼

 途端に鋭い痛みが足元に突き刺さる。


「うぐっ――!?」


「ん、どうかしたかしら、夜空君?」


「んっ——った!?」


 俺が勘繰るように視線を向けると右脚に彼女の小さな右脚がもう一発。

 突き刺さり、潰れる様な痛みが再び足全体に広がり、ドグシャっ⁉ と言った変な骨の音が響き渡った。


「な、なんでもないですっ……」


「それでよし、いい子ね」


「俺は犬じゃな――ん!?」


 再び一発。

 それが会心の一撃になり、その場にしゃがみ悶えたのは別の話だ。






【君塚森香】


 口実が出来た。

 口実が出来た。


 もう一回言う。口実が出来た‼‼


 その日の放課後はクラスでの準備を進め、残りはメニューや作り方、外装の完成を残すのみとなった。


 そして、放課後。


「おいおい、良いのかよ……あんなの受け入れちゃってよ」


「ん、あぁ、良いの別に」


「え、なんでだよ、俺たちには普通にクラスでの仕事だって……」


「それはそれよ。私たちはまず、実行委員会なんだからそっちが優先なのっ……」


「えぇ……それじゃあ、俺たちの立場が……だってあいつ、椎名のやつが仕事もしないとシフト増やすぞって」


「私は関係ないし、良いからとにかくやるわよ!」


「いやでも——」


「いいから、私たちだってやることいっぱいあるんだから、弱音吐いてる暇ないのぉ~~」


「弱音じゃなくて、あんなの別にやらなくても良かったんじゃないかって言ってるんだよ」


「それが弱音じゃん?」


「弱音じゃねえ……もう、なんなんだよ急に」


 むすっと頬を膨らませて視線を逸らす空。

 

 かわっ——。

 あぁっと危ない危ない、ついつい本音が漏れてしまった。こういう時に見せる顔がもう、あざといんだよなぁ……。


 って、そうじゃなくて……今日中に明日までに終わらせなくちゃいけない仕事だから、どうしようか。


「っていうかさ、この当日配布用のしおりって明日までに提出しなきゃダメなんだろ? しかも、しおりを印刷して、それを実行委員長と担当の先生にさ?」


「あぁ~~それなんだけどさ、空。今日、うち来ない?」


「うち? 何のうちだ?」


「……私の家って意味だけど?」


「ん、あぁ、森香の家なのか……そうか」


「うん、ね? いいでしょ?」


 ぽかーんと口を頬けてから呟くと、次の瞬間。

 ハッとして、直ぐに私の顔を見つめる。


「————え⁉ も、森香の家?」


「ひゃっ……え、ぁ、そうだけど……だめかな?」


「あぁ、ごめん……でもいいのかよ、家なんて行ってさ。親とかは大丈夫なのか?」


「うんっ。二人とも今日は家にはいないの、というかあと数日は出張で帰ってこないの」


「そ、そうなのか……いやでもさすがに女の子の家は!」


 途端に何かを意識したのか顔を赤くする空。

 うん、その顔は入った甲斐があった!


「いいから、私がいいって言ってるんだからね……大丈夫大丈夫~~!」


「ん、いやま――!?」


「よしっ、行くぞーー‼‼」


 そうして、私は彼の少し震えた手を掴んで、家まで小走りで向かった。



<あとがき>


 投稿一日あけてしまってすみません‼‼

 はじまった自宅デート編!

 次回も続きから行きます!!

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