第一章「錯綜する三人の思い」

第1話「俺、夜空だけどなんだこのライン?」


 翌朝、俺は燦燦と照り付ける陽の光で目を覚ました。


「ふぅ……ぁ」


 おぼつかない思考にエンジンをかけ、昨日あった出来事を思い出す。


 唐突に知らされた告白の件。


 もしかしたら森香が知らない男に取られるという事実を押し付けられた。


 今までは、幼馴染だしあいつにかぎって……そんな考えでいたが、さすがにあの言葉で俺も覚めた。


 これはもう————、

 

 状況はすでにWILLで何とかなるようなものではない、MUSTだ、MUSTでSHOULDな悪い状況にある。


 いや、何も、世界を救うとか、国のために命を懸けるとか、最愛の彼女を生き返らせるとか——そういう大層なことを誓ったわけではない。


 だがしかし、俺にとっては今世紀最大の誓いである。


 俺史上、最高で最大級の大きな誓いであるのは間違いない。それだけは絶対に言える。


 そう、俺は今日、好きな女の子に告白をするのだ!!


 可愛い可愛い幼馴染の君塚森香に告白する----そう、決めたのだ!!




「今日が勝負の一日だああああああああああ‼︎‼︎‼︎」




 咆哮は響く。


 誓った分の重みも乗せて、決着をつけるべく……言葉よ届け、未来の自分に届けと祈って叫んだ。







 のだが……。









「よぉーうぃ、委員会があることは忘れんなぁ〜〜。ほんじゃ先生からは以上! 日直!」


「起立っ! 気を付けっ、さようなら!」


「「「「「「さようなら~~」」」」」」


 いつのまにか、今日もほぼ終わった。


 退屈な毎日の繰り返し、部活も行っていない、友達も大していない俺の一日はこうして終わる。


 それもいつも通り、あとは森香の学級委員長会終わるまで待つだけ。







 ——————ん?

 ——————あれ、なんか、おかしくね?






「あぁ、じゃあ私、委員会行ってくるから図書館で待っててね~~」


「おう、頑張れよ~~」


「うい~~」


 これもいつも交わす会話。


 高校一年生の頃から委員会に入っていた幼馴染と月から金まで同じように交わしてきた言葉である。



 おかしい、明らかにおかしい。


 俺は昨日の今日で何を誓ったんだっけ?


 森香が教室を出たのを見て、俺も掃除の終わった教室を後にする。


 夕暮れ時の涼しげなそよ風が吹き、肌寒いのを感じて両腕を組み震えながら、図書館へ向かうその道で頭をフル回転させる。


 すこし、思い出してみようか。


 昨日、いつも通り森香と一緒にエモさ溢れる夕暮れ時の帰り道を歩いていると——唐突に彼女が言ったのだ。


『私ねっ、今日……


 まさかのまさかだったが確実に聞き間違いではない。

 俺も、ラノベの鈍感系主人公ではないからそのくらい分かる。


 そして、だ。

 森香はこうも言っていた。俺の入る余地もなく、すぐさまこう言った。


『だーかーらー、私。後輩の男の子から告白されたの』


 後輩の男子。


 つまり、森香が後輩と関わり合いを持つのはこの高校ではたった一つしかない。


 委員会だ。


 各学年の学級委員長たちが集う、副委員長も集う、あの集会だけ。


 しかし、それだけではない。


 君塚森香は二年生の学年代表にして、在校生代表でもある。


 後期の新生徒会発足に向けて新生徒会長になるのが最も期待される、二年の絶対的エースである彼女。


 つまり、後輩からはあこがれの的。


 それも高スペックで委員長を楽々とこなせる化け物たちの憧れの的である……というわけだ。


 いくら幼馴染という称号があっても、それをお茶の子さいさいで打ち砕く実力のある後輩が————彼女の事を好きなのかもしれない。


 したがって、俺の置かれた状況は大ピンチ……というわけだ。



『でもま、明後日までには決めるしいろいろ考えてみるよ~~』



 何より、俺に残されたタイムリミットは一日。


 今日しかない。

 森香の言った明後日はすでに明日に控えている。

 

 もしも、ここで俺が何も動かずうじうじとしていれば彼女を取られて、二年生からが本番の体育祭や文化祭、ましては修学旅行でさえも……面白くないことに。


 やばい、やばい、やばい。


 出川何とかじゃないけど、真面目にヤバい状況にいる。


 

 だから、だからこそだ。


 俺は何を誓ったんだ?


 告白するとそう誓った。



 今の時刻は午後4時。タイムリミットはあと8時間。



「や、やb、やべえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ‼‼‼‼」


「図書室は静かにして下さ~~い」


「——っ⁉ す、すみません……」


 だめだ、さすがに焦り過ぎだ。

 冷静を保たなければ……冷静じゃないやつなんて森香も絶対嫌だろうし。


 冷静沈着に、かつ情熱的に優しく告白して——彼女の心を掴む。


 幼馴染として、ずっと見てきたからこそ。


 今日ですべてを決着させるんだ!!


 小さいときにした「婚姻届」の約束、結婚しようという約束を叶えるために……そう心の中で意気込んで、俺は図書室にて作戦を練ることにした。




 それから、十数分後。



 告白の言葉がなかなかまとまらない中、一本のラインが入る。


 そろそろ委員会も終わり、森香からの今から行くよというメッセージなのかと思った俺は何気なくその画面を開く。


「お、やっぱりもr…………っ⁉」


 思わず、息が止まった。


「え……ま、まじ……」


 そこに書いてあったのは——残酷な宣告。

 意気込んでいた俺にとって、後がない俺にとっては会心の一撃となる多大なる一打。


『昨日の後輩の子と……いろいろ話さなくちゃならないから遅くなる。もしかしたら、一緒に帰るから……先、帰ってて』


 まさに、敗北の王手が後輩きゅうてきの手において打たれた瞬間だった。






<あとがき>


 初日で30フォロワー突破ありがとうございます。

 いやぁ、10万文字書かないとこの話が終わるにも終われない状況を作ってしまったふぁなおですが、フォロワー2000人くらいの規模になったらモチベーション爆上がりで20万文字くらい書きそうですね(笑)


 このもどかしい両片思いに終止符を――と思った矢先の残念な宣告。次回は、森香視点でその理由を知ってもらいましょうか。


 良かったらコメントレビューもしてね!!

 ていうかしてほしい!!


 いっぱい伸びて、アンチがつくほどになってほしい!!


 僕にお星さまとフォロワーをお恵みください!!

 



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