第7話「僕も生徒会立候補します!!」

【君塚森香】


 放課後、私はいつも通り学級委員長会へ行く準備を済ませ、掃除がある空に「玄関で待ってるよ」と言われ、廊下に出た。


 全く、委員長も馬鹿にはならない激務だ。うちの高校は6月末に学校祭が行われるため、5月の頭に差し掛かろうとしているこの時期から事務的な作業が増えてくる。


 もちろん、実行委員会がないわけではないのだが——彼らが本格的に動き始めるのは6月。それまで、生徒会、そして学級委員長一同は日々こうして会議を重ね、大元のシナリオを作っていくのだ。


 それにしても——学校祭かぁ。

 去年も去年で楽しかったが、何せ空と一緒のクラスではなかったためかその期待も半減していた。良く分からない男子に告白されて、振らねばならないという後味の悪い結果になったし、向こうももう少し考えてほしいものだ。


 本人の目の前で男子が泣くなと言ってやりたい。


 しかし、今年は違う。

 本命がいる。


 幼馴染でもあり、初恋相手でもあり、最高で最強に可愛い、気の利く――いざという時はやってくれる星野夜空、空がいる。


 学校祭も——二人で行っても楽しめるように頑張らなきゃ!


「よしっ——!」


 一人階段で決意し、軽い足を滑らせて私は会議室へ向かった。







 会議室に行くとすでに何人かが一足早く集まっていた。

 さすが、みんなそわそわしているのか、緊張と期待がひしひしと伝わってくる。無論、私もその一人だ。


「君塚先輩っ——」


 すると、後ろから声が掛かった。

 肩がビクリと震え、思わず驚いてしまった。

 そう、何も隠そう昨日の今日でたくさん聞いて、もはや聞き慣れてしまった男子の声。


「あぁ、池上君……」


「先輩、あれ? どうしたんすか、呆気を取られたかのような顔して……」


「えっ⁉ いや、べ、別に何でもないよ!」


 何を隠そう、呆気は取られていた。

 池上君も懲りない、思いのベクトルは空に傾いている私にこうもアタックしてくるとは——その精神は見習いたい。


 というか、むしろ欲しいまである。私自身、クラスメイトや後輩から慕われて、凄いだの、可愛いだの、頑張ってるだの――諸々言われてるけど、私からしたら池上君の方が頑張っているように見える。


 悔しいが——絶対そうだ。


「あぁ——そうだ、池上君。ちょっといいかな?」


「え、はい、なんです?」


「この前の学校祭の議事録って確認した?」


「一応しましたけど~~、あ、そうだ! 書記さん今日これなかったんでしたっけ?」


「うん、だからまとめるのやってくれない? 私も、生徒会からいろいろ頼まれてるのあってできなくて……いいかな?」


「はい!! もちろん、君塚先輩のご命令とあらば!!」


「良い返事ね、伍長?」


「ははっ、これも大尉の賜物ですよ~~」


 と、若干の茶番を終えて、彼は元気そうに自分の場所へ戻っていった。しかし、私も負けていられない。とりあえず、五月末までには備品点検や、学級会計との連携を取りながらそれぞれのクラスの予算、周りの整備諸々を生徒会と一緒にやってかなきゃ。


 この学校祭も終われば、いよいよ生徒会選挙だし。頑張ろう。




【星野夜空】


「おまたせ~~」


「おお、お疲れ様」


 図書館で適当に宿題を終わらせ、時間通りに玄関で待っていると額に汗を浮かべて嬉しそうに森香が走って来た。


「ほら、ハンカチ」


「え、あぁ、ありがと!」


「それで、どうだった? 結構進んだの?」


「——あぁ、うんっ。って! こんな時まで仕事の話なんてしたくないよ!!」


「ははっ、そうだね、ごめん」


「もう!」


 可愛い笑顔だ。

 ここまで真面目に業務を果たしてきて、俺の前では散々愛嬌振りまいてくれるのはもう、最高だな。


 ワンチャン、俺のこと好きなんじゃないかって思っちゃうけど……こいつに限ってそんなことはないだろう。


「まぁ、それはよしとして帰ろうか」


「うん! 今日はゲームしよっ!」


「え、俺の家くるの?」


「だめ?」


「まぁ、いいけど……明日までの課題とか大丈夫なん?」


「課題? そんなの授業中にやったし、息抜きも必要じゃん? 息抜きもぉ~~」


 いやはや、さすがみんなの憧れの的。

 生徒会やら委員会やらで忙しくて勉強できなかったと、駄々をこねる生徒もたくさんいるのに彼女はすべて終わらせているとは——別格だな。


「あぁ、それならいいか。母さんもいるけどいいのか?」


「え、もちろん! というか会いたかったし、むしろ歓迎っ」


「確かに二人とも気が合うもんな。ご飯も食べてくか?」


「いいのっ⁉」


「良いと思うぞ、きっと母さんも喜んでくれる」


「よっしゃ!」


 ガッツポーズを決めて、ひとしきり喜ぶと森香は楽しそうに俺の腕を引っ張った。


「早くいこっ——‼」


「分かったよ」


 まったく、今までの焦り様はどこに行ったのか。

 そんなことすら思わずに呑気な俺はどこ吹く風とついていった。



<あとがき>


 これからワクチン受けてきます(2回目)。

 恐らく明日、ダウンするので上げられなかったら申し訳ないです!! 

 10万文字まであと7万くらい? 

 とにかく二人の行く末、もしくは後輩君の戦いを見守ってくださいな!


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