第20話「ハンバーガー~頬の痛みを添えて~」
【星野夜空】
「いたたたっ……」
「空が悪いんだよ……むぅ」
あれから一時間が経ち、USBやクラスで必要そうなものをまとめて買った俺たちは有名なハンバーガー店にて商品を待っていた。
「いや、それは謝るけどさ……殴るのは良くないよ」
「私の胸はね、そのくらいの価値があるのっ……」
「そうですか……ほんとに痛いんだぞ?」
「知ってる、等価交換だし」
「あと出しだ……」
「知らない、後払いさせたんだからいいでしょ?」
まったく、俺の頬の痛みも分からん癖に言いやがって。
まぁ、確かにあの感触は忘れるはずもないくらいには柔らかく優しく、そして温かかったことを考えると——割には合ってるかもしれない。
いや、でも。
昔は結構、一緒にお風呂は入ったりしてたんだぞ?
記憶は皆無だが、きっと胸だって触って俺の局部を触られたt——
「——ねぇ、顔がいやらしいんだけど?」
「——っ。な、なんだよ急に」
「いやぁ、別に。なんか変なこと考えてるんじゃないかなってね」
「んなわけ」
今でも十分ロリっ子だが、本当のロリだったころの森香の裸なら考えてしまった。
「……?」
「あ、あぁ……ほんとだって」
眼力。
委員長モードの森香も目つきは割と鋭いがこれは比にはならん。
俺にだけ見せるあざと可愛い一面がある幼馴染なのだが、勿論それはいい意味での話だ。
俺にだけ見せる一面というのは普通に悪い方も含まれる。森香も人間で、気分が悪くなったり、嫌いになったり、不機嫌になる。それをぶつけるのは他の誰でもなく、幼馴染の俺。
信頼なのか、はたまた嫌悪なのかは定かではないが日々鬱憤を溜める仕事柄だということは理解している自負はある。だからこそ、そんな彼女の悪い面を受け入れるようにはしている。
つまり、何が言いたいのかというと——森香の瞳は怖かったということだ(?)
「……ほんとぉ?」
「ほ、ほんとだって……」
ギロリ。
幻聴が聞こえるくらいには怖かった。
「ふぅん、ならいいけどぉ……」
「マジだから……俺はそこまで変態じゃないしな」
「……え?」
「はい……?」
「いや、だから——空って結構変態じゃん! この前のアニメだってさ、良い所は最後の伏線回収の場面なのにさ、やれヒロインの格好がとか、負けヒロインの背中が—とかって言ってたし!」
「そ、それは事実を言ったまでで――」
「それが変態なんでしょ! このスケベ空!」
「お、おい!! 俺の名前にスケベってつけるな!」
「いいんだもぉ~~ん、だって幼馴染の胸触っちゃうくらい変態なんだもんね~~」
「んぐっ~~‼‼」
くそお。
本当のことでぐうの音も出ない。
いくら俺がやりたくてやったわけではなくても、してしまったことには変わらない。
「お待たせしました~~、ビックバーガーセットとチキンナゲット、シェイク、サラダです~~。ごゆっくり~~」
そして、ナイスタイミング。
森香からの偏見の目に対し、俺がギリギリと睨みつけ、いがみ合っている所に
俺たち二人があーだこーだと言い合っているところから痴話喧嘩だと察したのかニマニマと笑みを溢しながら歩いてきた年長店員。恋愛の歴戦の戦場を越えてきたかのような皺には貫禄まで感じる。
そんな彼女のオーラにやられ、俺たち二人は一瞬だけ固まる。
「——あ、ありがとうございます」
「ど、どうも……」
ビクついて動きだした森香に次いで、俺も会釈をし、セットを受け取った。
「じゃ、じゃあ……食べるかしらねっ」
「あ、あぁ。そうだな」
そして、数分後。
「うまぁ~~~~、ねねっ、ナゲットめっちゃうまいんだけど!! なんまらうまいんだけどぉ‼‼‼」
「……うまいなぁ~~」
気持ちの入れ替えも早い森香。
そんな彼女のスピードに俺は頷くことしかできず、ついていくことはできなかった。
次回、急な仕事? お泊りデート編
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