第16話「ねぇ、誰の着物見てみたいのぉ?」
【君塚森香】
「っ……」
なんて可愛いんだ、空は。
愛おしさと変な面白さで笑いが止まらない。
だめだ、こりゃツボだ。
先生のギャグセンスとタイミングもさることながら、完璧だった。
それに、まじで可愛い。
頬を赤らめて、俯く空が滅茶クソ可愛い。
これがあざといとは言えないかも知れないけど、そんなの空が可愛いければどうでもいい。ああぁ、もう最高だ。先生、マジ感謝。
——なんて、心では溢れ出る本音を授業後のチャイムまでなんとか抑えつけて、私は自らの興奮を制したのだった。
「ご飯食べよ~~、森香ぁ」
「ん、あぁ、いいよっ」
私が机の上でお弁当箱を準備すると、隣の男子の席に座った彼女。
最近は少し忙しくて教室で話していなかったが久々に見てみるとやっぱり三つ編み眼鏡美少女だった。
その可愛さは空に負けず劣らずだとか、なーんて噂もあるとかないとか。
彼女の名は霧島魅音。
私の親友である。
この前も説明したことがある気がするが——まあ、いいや。
とにかく可愛くて面倒見のいい近所のお姉ちゃんの様な感じだ。
「お、そうだ、机くっ付けてもいい?」
「うん、私も。よいしょっと」
「ういっしょ」
揺れる髪の毛、私と彼女の三つ編みがくっつき、いい匂いがする。
この良さを分かっていない男子共は即刻打ち首にしたほうがいいまである。
「魅音、シャンプー変えたの?」
「……おっ、分かる?」
「うん、なんかちょっと違うし」
「さすが! 委員長は違うなぁ~~」
「そんなことないよ~~」
そんな風に笑い合い、私たちはそれぞれのお弁当を開けた。
「いやぁ、お腹空いたねぇ」
「めっちゃ笑ったからね」
「あははっ! いやぁ、さすが夜空君だねっ。私も思わず笑っちゃった!」
「それにどうしてか、可愛いのがずるいしね~~」
「え、可愛い?」
「う、うん?」
「……」
すると、じーっと私の目を見つめる彼女。
あれ、私何か変なこと言ったかな。
それに、そこまで見つめられるとさすがに照れる。
「ま……そうか、そうだよね……うんうんっ」
「え、いや……なんで一人で独りで納得してるのっ……」
「いやいや、こっちの話だからさ。ほらっ、早く食べよ!」
そう言い捨てると一人でに弁当箱を開け始める彼女。
一体全体何を分かったのか……まあ、この子もこの子で変わっているところあるし気にしないことにしよう。
パクリと一口食べて、「うぅ~~ん!」と美味しそうに笑う魅音。
桃色に照り輝く唇がぷくっと浮き上がり、見ているこっちにもその美味しさが伝わるくらいだった。
「うぅ~~‼‼」
「美味しそうだね、またお父さんが作ったの?」
「うんっ! 凄いしょ、私の親父!」
「すごいねっ。私のお父さんなんて亭主関白だから……『俺は台所には立たん‼‼』ってエヴァのトウジみたいなこと言うんだよ? ほんと羨ましいよ~~」
「ははっ……それは、今だと炎上しそうだね……」
「それもある。お母さんは専業主婦だからそれもそうだなってところあるし、私も何も言えないんだよ」
「あ、でもそれならさ、今度私の親父に言って作ってもらう?」
「え、いいの?」
「うん、森香ならいいって言うだろうしね。あ——でもまあ、(セクハラには気を付けてね)」
「え、何?」
「いやいや、なんでもない! 親父の話だから気にしないで‼‼」
「は、はぁ……」
なんかすごい重要なことを聞きそびれた気がするのだが、まあいいか。
――――じゃなくて。
それにしてもだ。
それにしても、お父さんのことを親父って言うのやめないかな、この子。べつにそれはそれでもいいんだけど、見た目に全く合わないから違和感を感じる。
「ん、どうしたの? 顔を顰めて?」
「いやぁ、まあね……なんでもない」
「そ、そう? ならいいけど、あ、ミートボールだっ。もらいっ」
「え、あ——!」
「あむっ。はむはむっぅ……なにこれ、うまっ⁉」
「あえ、そ、そうっ?」
「うんっ、冷たいのにこんなにおいしいのは初めてだよっ! だってほら、中はにくじるたっぷりで、最高っ! ……やっぱり森香が作ったの?」
「まあね、いっつも作ってるし」
「一年生から作ってるだけあって上達が半端ないわね」
「べ、別に……そんなことは」
「いやいや! これが食べれちゃう彼氏君が羨ましいねぇ~~」
「い、居ないし‼‼」
「あははっ~~、そうだったねぇ……まっ、幼馴染、はね?」
「ち、ちがっ……そんなん……違うしっ」
「まあまあ、顔赤くしちゃって……これが委員長なのが不思議なくらいね、まったく。文化祭も一緒に作ってるそうだし、今年は楽しめるんじゃないの?」
「それはそうだけど……別に私と空はそんな関係じゃないしっ」
「ふふ~~ん、そうかぁ……まあ、私は応援してるからさ頑張ってくれたまえよ~~」
「——っんな‼ だからそんなんじゃないって‼‼」
ま、まったく。
やめてほしい……。空は空で文化祭を楽しめるものにしようと必死なんだから、私とのことなんて関係ないんだし。たまたま、たまたまだよ、絶対。
……でも、デートできるのか?
分かっていてもそんな妄想さえしてしまう私はもう、末期だろうか。
着物姿、見てみたいな。コスプレでも。
<あとがき>
いやぁ、そろそろ折り返しですね……。
コメントが徐々に途切れてしまっていて悲しいですが、この文化祭編が一個目の山場でもあります。今まで後輩君に取られてばっかりな彼の見せ場は——まさにここにあり! 本編をお楽しみに!!
PS:自車校の卒検頑張ってきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます