第20話 届いたプレゼント
ホームルームが終わり、みんなが帰った。
が、俺と両親。さらにけんか相手とその両親。その全員が指導室に呼ばれる。
「(おい、初日から何やったんだ?)」
「(俺は何もしてない)」
父さんが耳打ちしてきた。母さんはすこぶる機嫌が悪い。
「さて、一ノ瀬君と槇原(まきはら)君。二人とも何をしたかわかるね?」
学年主任? だっけこの人。体格もいいし、背も高い。
それに、目が怖いです。はい。
「わかりません。こいつが先に手を──」
「はぁ! お前が先に言ってきたん──」
──パァァァン
手のひらをたたく音が響く。
「はいそこまで。お互いに言いたいことはわかりますが、けんかは良くないですね」
この後、いろいろと話をされ、やっと解放された。
本来なら出るはずのない課題。俺とこいつは先生から課題(反省文原稿用紙五枚)を出され、明日提出することになった。
くっそ、あいつのせいで……。
帰りの車の中、こっぴどく怒られる。
しかも、今夜はハンバーグだったのに納豆ご飯になった。あの野郎……、この恨み明日晴らしてやるからな!
夕飯も終わり、机に向かって課題に取り組む。なぜこんな事になったのか。
すべてはあの槇原(まきはら)ってやつのせいだ。あいつがあんなこと言わなければ……。
文句を言っても課題は終わらない。書きたくもない反省を文字につづる。
──ピンポーン
こんな時間に?
「はーい」
母さんが玄関に向かう足音が聞こえた。
「ありがとうございます」
──コンコン
「なに?」
「お届け物だけど、課題終わった?」
「終わるはずないだろ?」
「じゃ、ソフィアちゃんからの小包はまた──」
「ソフィーから! 終わらせる! すぐに終わらせるから!」
終わった。何時間もかかると思った課題が嘘のような時間で終わる。
あれだな、想いの力ってやつかもしれない。
台所に行き、母さんにさっきの小包について聞いてみる。
「課題終わった。どれ? どこ? どこに置いたの?」
「……唯人、落ち着きなさい。ほら、あそこに置いてあ──」
「ありがとう!」
母さんの話も聞かず、届いた小包を手に持ち自分の部屋に戻る。
何だろ? いつもなら手紙なのに、今回は箱だ。
ドキドキしながら箱を開ける。
なにかな? なにかな?
中には一枚の手紙とさらに箱。手紙を早速読んでみる。
『パパからのプレゼント。また、いっしょにしゃしんとりたいね』
写真? 箱に入ったもう一つの箱を開けてみる。
中にはカメラとか、なんかいろいろと入っていた。
あの日壊してしまったカメラに似ている。でも、少し違う?
カメラを取り出し、電源を入れてみる。が、うんともすんとも言わない。
充電しないとだめなのか。バッテリーを充電し、カメラを握ってみる。
父さんが持っている小さなカメラとは違う大きいカメラ。
確か一眼レフカメラだったかな?
あの日たくさん撮ったソフィーの写真。
そして、俺とソフィーの二人で撮った写真。今でも大切に持っている。
カメラか……。また、ソフィーと一緒に花火に行ったり、出かけたりしたいな……。
一応父さんに報告しておくか。カメラを部屋に置き、父さんたちの所に行く。
「あのさ、ソフィーのお父さんからカメラが届いた。プレゼントだって」
「カメラ? よかったな入学祝だ。大切に使えよ? 壊すなよ」
「わかったよ」
「そういえばソフィアちゃんと花火に行ったとき、唯人はテイラーさんのカメラ壊したわよね」
「そうそう、懐かしいな……」
「大切に使うよ。今度はうまく撮れるように練習しておく」
小さいデジカメと違ってこのカメラはなんか普通に撮れなかった。
練習して、いい写真をたくさん撮ってソフィーに贈ろう。一つ、やりたいことが増えた。
その日、枕元にカメラとソフィーの手紙を置いて眠りにつく。
夢の中で、俺はソフィーをモデルにたくさんの写真を撮っていた。
広がる草原の中、どこまでも続く浜辺、そしてあの花火会場。
どのシーンでも、ソフィーは俺に笑顔を見せてくれていた。
また、ソフィーの笑顔を見たい。そう願っていた。
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